キハ17系気動車
狭幅郵便荷物車

キハ17系とは
 気動車にとって暗黒の時代であった戦中戦後も、昭和27年に燃料統制が解除されるころになると本格的な復活の時期を迎え、キハ41000やキハ42000といった戦前製車両のディーゼルエンジン化、図面利用による新製車輌(キハ41600・キハ42600)の製作が行われました。その一方、これからの気動車についての模索が始まりました。戦前製の気動車の多くは機械式(自動車で言うマニュアル式)という動力伝達方式を使っていたため、2輌以上で列車を走らせるには各車輌に運転手を配置しなければならず、運転技術も高度なものを要求され、さらに変速時の衝撃も大きいことなど不便な点が多く、機械式に替わる動力伝達方式の検討が始められました。
 2輌以上の気動車を一人の運転士によって運転する「総括制御」の方式には、「電気式」と「液体式」があります。「電気式」とは、エンジンで発電機を回して電気を発生させ、この電気でモーターを動かす方式で、架線不要の電車のような方式です。一方「液体式」とは、エンジンの動力を車輪に伝える点は「機械式」と同じですが、「トルクコンバーター(液体変速機)」を使用することで総括制御をするうえで問題であったクラッチ操作をなくし、変速操作を電気的に行えるようにしたものです。自動車のマニュアル車とオートマ車と考えてもらえばご理解いただけると思います(自動変速ではありません)。どちらの方式もすでに試験的に採用したことがあり、今回本格的に導入するにあたり動力伝達方式を確定させることになったのです。  (詳しい動力伝達方式の説明は別の機会にさせていただきます)
 まず「電気式」を採用したキハ44000が昭和27年に4輌製作されました。エンジンはDMH17Aを使用し、モーターはMT45(45kw)を台車に2台装備しました。なお、モーターの伝達方式は直角カルダン式が採用され、これは電車も通じて初めてとなっています。
 翌昭和28年には「液体式」のキハ44500が4輌製作され、エンジンはDMH17Bが使用されました。また、「電気式」もキハ44000が11輌増備されたほか、2扉として中間車キハ44200を従えたキハ44100が計15輌製造されました。この2つの方式を比較検討したところ、「電気式」は車体重量が重く、構造が複雑であり製作費も高かったことから、今後登場する気動車の動力伝達方式は「液体式」が採用され、一部の例外を除き現在もこの原則が続いています。
 近代気動車の基本像が完成し、量産体制を視野に入れた車輌として登場したのがキハ45000、のちのキハ17です。車体は軽量化がされ、車体も客車や電車と比べてひとまわり小さなものになりました。これはエンジン出力が弱いことから行われていたもので、戦前製気動車の流れを受けるものでした。そのため客室は天井が低く、シート幅が狭いうえに肘掛がないなどサービス面で問題となる部分もありました。また、客車列車の置換えという目的のためか、座席のほとんどがクロスシートとなっていました。それでも総括制御が可能になったことから前面に貫通路が設けられ、その姿は今までの1輌で動くという気動車像を打ち破るのにふさわしいものになりました。
 キハ45000(キハ17)は昭和28年に登場し、中間車のキハ46000(キハ18)も登場しました。翌昭和29年にはキハ45000からトイレをなくしたキハ45500(キハ16)、初の2等車であるキロハ47000(キロハ18)、試作2エンジン車のキハ44600(キハ50)が登場しました。さらに昭和30年には両運転台車のキハ48000(キハ11)、キハ48000からトイレをなくしたキハ48100(キハ10)、本格的な2エンジン車のキハ44700(キハ51)が登場し、昭和31年には北海道用に耐寒装備をしたキハ48200(キハ12)が登場してキハ17系が勢ぞろいしました。キハ17は402両が製造され、グループ全体では760輌にも及び非電化路線の新しい顔として知れ渡るようになってゆきました。昭和32年4月1日には形式が改められ、キハ17などご存知の形式に変わりました。
 昭和32年にキハ20系の製造が始まり、キハ17系の生産は終了しました。その後試作車や中間車は郵便荷物車へと改造がされ、多彩な車輌が新たに登場することとなりました。これはキハ17などの基幹形式にも及び、17もの形式が登場しました。こうして気動車の礎を築いたキハ17系も昭和40年代後半になると車体の老朽化が目立ち、狭い客室設備などもあり廃車が始まりました。キハ17系の置換えを目的としたキハ40系が登場するようになるとこの流れは加速し、1980年代に入る頃には営業用として残る車輌はわずかとなっていました。しかし一部は非電化私鉄に譲渡され、もうしばらく活躍する姿を目にすることができました。近年ではこうした譲渡車輌が、キハ17系の功績を語り継ぐ生き証人として保存されるようになっています。


キハ17系
キハ17
(旧キハ45000)  
キハ16
(旧キハ45500)  
キハ18
(旧キハ46000)  
キロハ18
(旧キロハ47000)  
キハ10
(旧キハ48100)  
キハ11
(旧キハ48000)  
キハ12
(旧キハ48200)  
キハ15
(旧キハ44500)  
キハ50
(旧キハ44600)  
キハ51
(旧キハ44700)  
旧キハ09
(旧キハ44000)  
キハ19
(旧キハ44200)  
キハユニ15   キハユニ16   キハユニ17   キハユニ18  
キハユ15 キハニ15 キユニ11   キユニ15  
キユニ16   キユニ17   キユニ18   キユニ19  
荷物車 (キニ15・16・17・19・55)  


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