特集 キハ58系再発売記念 その5



目次
@車輌ドア
Aタイフォン
Bバランサー蓋
C給水口
D便所窓
E通風器
F尾灯
Gワイパーと手すり
H冷房関係
I標識かけ
J強制通風装置
Kキロの屋根について
LT社の
キハ58・28・キロ28

MK社のキハ58・
キロ28
NT社とK社の違い
OK社のキハ58を
T社仕様に改造

P客室
Q運転台
 今回は、これまでに取り上げてきた各パーツが模型ではどのように表現されているか確認してみることにします。幸いK社とT社がほぼ同時期に キハ58系を再発売したため、両者とも比較的入手しやすい状態となっています。ただし、最初に発売された時期は異なっているため、ともに違いが当然出て います。そのためどうしてもT社のものがよいと判断してしまい、以下の文章でもK社のものには厳しい文言が並びますが、これらの情報からどちらを 選びたいかは皆様の判断にお任せするものとして、とりかえず両社の各車輌について解説をしてゆきます。
 なお、これまでに紹介してきた各パーツの解説と照らし合わせやすいように、それぞれのパーツの番号を模型の写真に丸数字で図示しています。
LT社のキハ58・28・キロ28
 T社のキハ58系が発売されたのはもう10年以上も前。にもかかわらず、金型の大きな変更もなく現在でも通用するのですから、大したものです。 細かい部分もよく再現されており (逆にそれが厄介なことになることも...)、間近に見ても実車を彷彿とさせられます。特にT社のキハ58系が評価されるのが 発売当時はまだそれほどメジャーではなかったボディマウント式のカプラーを採用したことです。これによって、より実車のような感じが再現されることに なります。それは単に連結器の形状や機器の表現だけでなく、連結間隔や曲線通過時の車体の動き方など、実車とほぼ同じ仕組みとなっているからこその 再現となったのです。ただ、それは逆に、従来のアーノルドカプラーとの決別を意味し、他の形式と編成を組むことが困難になりました。すぐにアーノルド 接続用のカプラーが付属されるようになりしましたが、各社どの車輌でも...とは簡単にいかなくなりました。
 このキハ58系全体を通して共通して言える特徴は、後期形の車輌が再現されているということです。これはK社初期型の車輌を再現しているためか、単に 売り出す時期に多く残っていたのが後期形だったからか定かではありませんが、多数グループの特徴を混ぜ合わせたような印象を受けます。ただ、キロ28については なぜ少数派の2300番台 (最初の発売当時は2500番台も発売) なのか、という疑問は残ります。もちろん、K社が0番台を発売していたということはあるかも しれませんが、それならば100番台でもよかったのでは...と思わずにいられません。

13-1. キハ58 
T社キハ58-1
 側面でポイントとなるのは@のドア、Bのバランサー蓋、Eの通風器です。@BEの条件を全て照合すると、公式サイトの紹介どおりに 該当する車輌は549〜654となります。まず、これ以前の車輌であればBのバランサー蓋が存在しないか、このような形状ではありません。また、@のドアに 丸窓がついているため400番台以前の車輌にもなりえません。一方655以降の車輌とはならない理由はEの通風器です。655以降の車輌はデッキにも通風器が 増設され、8個設置されています。ただ、この通風器は特にJR後は撤去された車輌も多いため、時代設定によっては再現は可能です。
 ただ、この車番設定で完全に再現できなかった部分があります。それがDのトイレ窓です。本来この車番区分では、トイレ窓 (洗面所も同様) は波目ガラスが 使用されており、模型のような単純なスリガラス(石打目)ではなかったのです。もちろん「後年取り替えた」というような設定をすればOKとなります。
T社キハ58-2
 前面と妻面の両方で番号区分のポイントとなるのはFの尾灯とIの標識かけですが、残念なことにこのいずれも再現されている番号区分のものとは 異なっています。まずFの尾灯ですが、該当する549〜654では内バメ式となっており、尾灯の付け根が広まっているのが特徴です。これは仕方がないのかも しれませんが、内バメ式は外バメ式に比べて高さがない (前後方向に) のが特徴であり、内バメ式にしては出っ張りすぎの感があります。さらにIの標識かけは 平窓車最後期に登場したI字型のもので、大多数の平窓車に見られた逆T字のものではありません。K社がちゃんと逆T字で表現されている以上、技術的な問題 ということには出来ません。非常に細かい部分ですが、側面の熱の入れように比べると前面・妻面はガッカリという印象を受けます。
T社キハ58-3
 側面の特徴的な部分のアップです。通風器の追加は比較的簡単に行えますが、丸窓を埋めることやバランサー蓋の加工はちょっとした手間です。 一番の問題は「色」でしょう。埋めたり削ったりという作業は多少「いじる」ことを経験されている方ならば簡単に出来るのですが、そのあと同じ色に塗る ということがなかなかのものです。これは決して「塗る」事が大変という意味ではありません。「同じ色」にすることが難しいのです。鉄道用カラーは 大手、専門店問わず出ていますが、この模型メーカーの色そのものに合わせるということはなかなかできません。もちろん、全ての塗装を落とし、一から 自分で塗りなおすのであれば問題はないのですが、ちょっとした改造のために塗りなおすというのは大変な手間です。個人的には各メーカーには通販でもいいので こうした補修用の塗料を販売してもらえないだろうか...と考えているのですが、皆様はいかがでしょうか?


13-2. キハ28 
T社キハ28-1
 キハ58と同様に、側面でポイントとなるのは@のドア、Bのバランサー蓋、Eの通風器です。公式サイトでは2357〜2414を再現したとなっていますが、 @BEの条件で照合すると、これらは該当する車輌となります。しかし、キハ28の場合は、Cの給水口の位置が問題となってきます。
 Cの給水口の位置は398を境にして場所が移されました。模型で表現されているような前寄りのものは397 (2397) までとなります。したがってこのキハ28が 再現されている番号区分は2357〜2397となります。2398以降の場合は給水口が中央寄り、つまりキハ58の前側の給水口のみという形になります。致命的なミス、 というほどのものではありませんが、ちょっと惜しかったなという印象です。2398以降を再現する場合、現在の穴を埋め、新たの給水口を再現するより、 キハ58の後ろ側の給水口を埋めるほうが簡単な気がしますが...。
 あと、このキハ28においてもDのトイレ窓の問題があります。こちらも本来この車番区分では、トイレ窓 (洗面所も同様) は波目ガラスが使用されており、 模型のような単純なスリガラス(石打目)ではなかったのです。こちらも「後年取り替えた」というような設定をすればOKとなります。
T社キハ28-2
 前面と妻面のポイントもキハ58と同じです。ですので詳しい説明はキハ58の項をごらん頂くことで省略させていただきます。
 ただ、Hの冷房配電盤がキハ58よりも大形のものがついているのが特徴です。これは単なる調査車輌による個体差なのか、冷房ユニットがあるための 特別なもの (キハ28ならではのもの)なのか、当方の調査不足のため不明です。
T社キハ28-3
 側面の特徴的な部分のアップです。これもまたキハ58とほぼ同じことばかりなので詳細は省略しますが、Cの給水口ですね〜。2398以降は前から4つ目と 5つ目の窓の間の下ぐらいの位置になっています。

13-3. キロ28 
T社キロ28
 キロ28の場合は妻面に大きな特色はないので、側面のみの説明となります。
 キロ28-2300として発売されていますが、正確にはキロ28-2301〜2308となります。これは2309以降は屋根の形状とトイレ・洗面所の位置が変更されているためで、 これらの車輌を再現する場合は今回発売されなかったキロ28-2500を使用することになります。なお、キロ28-501〜505もほぼ同じ形状なのですが、冷房が4VK ではなく4DQであったため、黄色Hで示している冷房エンジンの形状が異なります。ただ、4DQは逆台形の防音カバーが取り付けられていたため、こちらへの 改造は比較的容易かもしれません。
 同様に近い外観の車輌にキロ28-196〜204があります。これはDのトイレ窓が2300番台と同様に長方形に変更されたグループのためなのですが、このグループの 屋根上には蛍光灯用の通風器がまだ残っていました。したがってこの部分の再現が必要となります。なお、トイレ窓に関しては透明の長方形はこの196〜204のみで モデリングされているキロ28-2300および2500番台はガラスが白色となっています。




 キハ58・28、キロ28と取り上げてきましたが、いずれも冷房車ばかりです。キハ58では549〜654、キハ28では2357〜2398、キロ28は2301〜2308が 該当する車輌としましたが、この中には非冷房車も含まれています。
 詳しくは履歴表を参考にしていただきたいのですが、キハ28ではいきなり2輌が非冷房のため、該当する車輌は2359〜2398 (つまり2357、2358という車輌は 存在しない) となり、キハ58では4輌も非冷房車が続き553〜654となります。幸いキロ28は全て該当となりますが、わずか8輌ですから...。






MK社のキハ58・キロ28
 K社のキハ58系には致命的な問題があります。それはキハ28・58ともに同じボディーを使用していることです。床下や屋根は キハ28となっているのですが、ボディーにはCで取り上げた給水口が2つ...。このままでは到底キハ28とはならないのです。最低でも後ろ側の 給水口を埋めなければキハ28とはなりませんし、この処置をした場合はキハ28でも398以降となるため他にも問題が出てきます (設定によっては問題 回避をすることは可能です)。こういう理由ですので、K社のキハ28については解説を省略いたします。
 次に、先ごろ発売されたキハ35系がK社の気動車では初のボディマウント式のカプラーとなったにもかかわらず、こちらは従前のアーノルドカプラーのまま。 T社では10年以上前からボディマウントのものにしているにもかかわらず、しかもそのカプラーを開発できているのにそれを見送ったのは、どういう考えで このタイミングで再発売をしたのか不思議でなりません。確かに足回り面やLEDといった進歩はありますが、いずれも小手先の対処療法という感じがします (LEDに関してはどんな風にしたのかと期待していたのですが、素人の加工のような出来栄えに驚いてしまいました)。
 T社のキハ58系が登場するまでは当然キハ58系はK社の物でなくては!だったのでしょうけど、より精密の再現されたT社のキハ58系が発売され、しかも 時代を経るごとにその差が歴然としてきた現在にあっては、K社のキハ58系はもはや安さだけが売り、となってしまったのが残念なところです。ぜひとも T社に負けないリニューアルをしてもらいたいものです。


14-1. キハ58 
K社キハ58-1
 ポイントとなるのはT社の場合と同じく@のドア、Bのバランサー蓋、Eの通風器です。ただし、K社の場合はこれらのポイントの全てが 初期車のものであることが特徴です。まず、Bのバランサー蓋は存在しないせず、何もありません。@のドアにも丸窓はついておらず、Eの通風器はT社の場合と 同じ6個のタイプです。でも、初期車の特徴が満載であるにもかかわらず、車番はなぜか平窓最末期車の1042...(M車の違うのかな?)。
 K社の場合でもやはりトイレ窓 (洗面所も同様) の表現が波目ガラスではなく単純なスリガラス (石打目) となっています。設定如何でOKとなることは、 もう言わなくてもいいですよね。
K社キハ58-2
 大問題なのが前面と妻面です。冷房車であるにもかかわらず、Hの冷房用のジャンパ線受けが完全に省略されています。隠れてよく見えない妻面なら ともかく、前面のほうが全く!というのが致命的です。前面幕がモールド表現にとどまっていることといい、これでは先頭に出すことは出来ません。 それでは非冷房の車体にすれば...というのも、妻面にはバッチリ配電盤が存在し、なぜかジャンパ線受けの場所には窪みが用意されています。Fの尾灯や Iの標識かけなどは問題がないだけに、非常に残念です。
K社キハ58-3
 側面のクローズアップ...。T社のものに比べると初期車の特徴が出ています。Bのバランサー蓋は存在しませんし、@のドアには丸窓がありません。 模型の場合「ある」ものをなくすより、「ない」ものに何かを加えるほうが簡単です。したがってこのつるつるのBの部分にスーッとスジ彫りをすれば バランサー蓋の後年改造が表現できますし、少し凝って正式なバランサー蓋を表現すればドア交換後 (JR以降とか) のキハ58が再現できます。スジ彫りの場合 ならば、色は黒のスミ入れで誤魔化す事が出来るので、車体色と合わせなければ...という問題は薄れます。


14-2. キロ28 
K社キロ28
 キロ28についても痛いミスが何箇所かあります。まず、再現されている車輌が通風器のある0番台であるにもかかわらず、Jの強制通風装置が 表現されているところ。そして車番が+2000となっていないにもかかわらず、電源が4VKであるだけでなく、4VK、4DQのどちらにも存在する 吸気口 (車体側面H) がどちら側にもないということ。まぁ、逆に言えば、改造をすれば0番台、100番台のどちらにもできるということなのかもしれませんが、結構な 手間になることは間違いありません。
K社キロ28
 K社のキロ28はいろいろとツッコミどころがある0番台ですが、意外と正確に再現されている部分もあります。それが屋根の高さです。 本当にビミョーな違いですので、パッと見ではわかりにくいのですが、左のT社のキロ28の屋根が頂上部分がやや平坦になっているのに対し、 右のK社キロ28の場合はなだらかな山形となっています。実車においても冷房準備車からは屋根の高さが60mm低くなっています。こうした うれしい再現の一方、残念な部分がここにもあります。これは貫通扉です。実際の0番台では妻面に貫通扉はなく、キハ58や28と同様に デッキ内側のみに扉がありました。冷房準備以降の109からはこの扉が妻面に移りましたので、0番台と101〜108の場合はこの扉を撤去する 必要があります。まあ、前後に連結してしまえばわかりませんが。あと、言うまでもありませんが、K社の方はHの冷房引き通し線が ありませんので、4DQ仕様となっています。

 T社とは異なる0番台であるだけに、その中途半端さが残念でなりません。改造するにも結構大変で、それなりの技術を必要とします。 もとの車体にプチリニューアルを重ねた結果がこう...という感じでしょうか?せめて屋根パーツを新しく作りかえて100番台にリニューアル、 なんてならないでしょうかね?あ、それでもツッコミどころは多いか...。



NT社とK社の違い
 キロについては冷房化が早かったこともあり、キハよりも空調関係のモデルチェンジが早く行われて いました。Jで取り上げた強制通風装置も早くに導入されており、蛍光灯用の通風器というキロ独特のものもありました。 この蛍光灯用通風器は後に廃止されたため、キロの屋根はより多くの種類が揃うこととなりました。
 冷房と通風器、蛍光灯用通風器、強制通風装置、屋根の高さなどにより分類すると、以下の表のようになります。
T社K社-1  側面の大きな違いは@のドアとBのバランサー蓋にあります。T社の場合は@のドアは丸窓付きでBのバランサー蓋も設置されている状態です。 一方K社の場合は丸窓のないドアで、バランサー蓋も設置されていないツルツルの状態です。この部分だけを見ても、T社は後期形の車体、K社は初期形の 車体だという事がわかります。
 細かいところでは、青色四角で囲んだ機器の形状が少し異なっています。これ以外の機器にも多少の差はありますが、大きな問題とはならないと思います。
T社K社-2
 前面の大きな違いは冷房用のジャンパ線受けの有無です。K社の場合は冷房化されている車輌にもかかわらず、このジャンパ線受けが モールドされていません。これは妻面も同様なのですが、悲しいことに配電板はしっかりと表現されており、完全な非冷房車体にはなっていません。
 違いはガラス部分にあります。前面ガラスおよび貫通扉ガラスの大きさがT社に比べるとK社のものは一回り小さくなっています。その割にHゴムの 太さは同じ (やや太いかも) ため、余計に小さく感じられます。また、K社の方の種別幕がライトパーツになっていないのも残念なところかもしれません。
 他の細かい部分では、Iの標識かけがT社ではI字の平窓最末期形であるのに対し、K社では一般的な逆T字型となっています。尾灯もT社では外バメ式の ようなスラッとした形状ですが、K社の場合は初期型に使用されていた内バメ式のものが表現されています。前照灯については特に問題はなさそうなのですが、 T社の方はレンズの縁を実車同様にすべく銀色で塗られていますが、K社のほうは全て車体色なので、ちょっと手を加えるといいアクセントになります。 些細ながらも修正は極めて困難なところを申しますと、車体のスソ絞りがT社に比べるとK社は控えめで、キハ56系の極初期型のような感じもします。
             T社K社-3  屋根上でも違いがあります。クーラーや通風器の形状、別パーツか否かということはもはや説明するまでもないと思います。しかし こうして並べてみないとわからないこともあるのです。一見すると同じように見えるT社 (右側) とK社 (左側) の屋根ですが、各パーツの配置が微妙に 異なっているのです。そもそも屋根の長さ自体が異なっており、運転席上面を見れば一目瞭然です。だから、ということはないと思うのですが、T社のほうは クーラーの間隔がやや広く、一番前のクーラーの位置はK社と比べてやや後ろにあります。一方K社はT社に比べると間隔は狭く、一番後ろのクーラーと 水タンクの距離もやや広めです。同様に通風器の位置もT社ではやや後寄りに、K社はやや前寄りに配置されています。
 ただ、クーラーや通風器の位置は冷房改造によるものですから各工場や施工時期によって多少の差はあったと思いますが、水タンクの形状も微妙に 異なっています。K社のほうは正方形に近い形状であるのに対し、T社のほうは長方形となっています。





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