本物マスコンで...補足

 「本物マスコンで...」シリーズは一応完結しましたが、最近実際にこの記事を読まれて本物マスコンを使用して製作された方がいらっしゃいまして、 そのやりとりから補足が必要と思い、今回このコラムに至りました。

 この補足でお伝えするのは電圧の設定です。完結したシリーズでは鉄道模型各社のコントローラー、及び車輌の最高電圧に準じて電圧を設定していましたが、 鉄道コレクションやBトレインショーティーなど、設定電圧が低い車輌を走らせる方もいらっしゃいます。こうした方にとっては12Vの設定電圧は高すぎ、 無駄な部分も多くあります。一般的な鉄道模型の場合でも、実際12Vで走行させるとその速度は新幹線なみとなり、リアリティーを追究する場合高い電圧は 不必要となります。もちろん、変速段のみで運転すれば高い電圧とはなりませんが、各ノッチごとの電圧差が大きい (と言っても1V未満なのですが) ため スムーズな運転とはなりません。最高電圧を低く設定して各ノッチ間の電圧差が小さくする方がスムーズな運転をする事ができ、なおかつマスコンの機能も フルに使うこともできるので、この方法についてご説明してゆきます。
 そもそも、この回路においてどれだけの電圧を得られるかは、回路に組み込む抵抗の値によって変わります。3端子レギュレーターICのデータシートに おいてもその計算式は公表されていますが、その計算式は Vout=1.25V(1+R2/R1)+IADJ(R2) となっていますが、このままでは 変数だらけでわかりません。この中でR1、R2となっているのが抵抗値で、このうちR1とはマスコン操作で変化しない固定の抵抗値であり、問題は操作により 変化するR2の値となります。マスコン操作により組み合わされる抵抗値の組み合わせは...と続けてもいいのですが、あまりにもムダに長くなりますので 結論だけお知らせします。
  • 切ノッチ=1.25*(1+((1/抵抗@)/200))
  • 1ノッチ=1.25*(1+((1/抵抗@)+(1/抵抗B)/200))
  • 2ノッチ=1.25*(1+(抵抗A/200))
  • 3ノッチ=1.25*(1+((抵抗A+抵抗B)/200))
  • 4ノッチ=1.25*(1+((抵抗@+抵抗B)/200))
  • 5ノッチ=1.25*(1+((抵抗@+抵抗A+抵抗B)/200))
 なお、直結運転の場合は抵抗Cを加えるので、次のような式となります。
  • 切ノッチ=1.25*(1+(((1/抵抗@)+抵抗C)/200))
  • 1ノッチ=1.25*(1+(((1/抵抗@)+(1/抵抗B)+抵抗C)/200))
  • 2ノッチ=1.25*(1+(抵抗A+抵抗C/200))
  • 3ノッチ=1.25*(1+((抵抗A+抵抗B+抵抗C)/200))
  • 4ノッチ=1.25*(1+((抵抗@+抵抗B+抵抗C)/200))
  • 5ノッチ=1.25*(1+((抵抗@+抵抗A+抵抗B+抵抗C)/200))
 ...とその前に、そもそも抵抗@とかCとかって何だぁ〜?という声が聞こえてくると思いますので、もう一度回路図をお見せしてご説明いたします。

 この回路図の中には430Ω、330Ω、240Ω、560Ω、200Ωの抵抗があります。このうち200Ωは変化しない固定の抵抗値で、計算式中でも「200」としている部分です。 この値を変化させても出力電圧は変わりますが、今回はこの値でのままとします。残りの抵抗が上記計算式の抵抗@〜Cとなるのですが、結論から申し上げると 抵抗@は430Ω、抵抗Aは330Ω、抵抗Bは240Ω、抵抗は560Ωとなります。各抵抗の番号と位置がわかったところで、それぞれの抵抗をどれだけに設定すればいいのか ということになります。もちろん上の計算式から導き出していただければ済むだけなのですが、各ノッチ段ごとの電圧差が一定である方が望ましいものになります。 実は今回このコラム執筆にあたり、色々と計算をしていたところ、ある比率で抵抗値を設定すれば電圧差は一定となる事がわかりました。それが次の式です。
(抵抗@/2)=抵抗A=抵抗B

 また、変速段と直結段を切り替えることにより入る抵抗Cの値についても、次のような事がわかりました。
  • 抵抗C=抵抗@+抵抗A+抵抗B  とすると変速5ノッチと直結オフ・1ノッチが同じ電圧となる
  • 抵抗C=抵抗@+抵抗A       とすると変速4ノッチと直結オフ・1ノッチが同じ電圧となる
  • 抵抗C=抵抗@            とすると変速3ノッチと直結オフ・1ノッチが同じ電圧となる
 それでも計算するのが面倒くさい〜という方のために、下に一例を作成しました。ただし、電圧差や最高電圧に重点を置いていますので、指定した抵抗値の 抵抗がない場合があります。その場合は複数の抵抗を直列につなぐか、可変抵抗を使用する (ただし精密に抵抗値を測定できなければダメ)。または一定比率の 電圧差や計算どおりの最高電圧をあきらめ、近似値の抵抗で代用するか、となります。特に抵抗の特徴として、数値が変化するのは抵抗値の上2ケタのみという ものがあります。例えば「150Ω、560Ω、2kΩ(2000Ω)」といった具合に上2ケタ以外は0が並び、「125Ω、633Ω」といった数値の抵抗は一般に販売していません。 以下の例でも揃える事が当然無理な数値とならないようにしていますが、実際に販売されている抵抗値であるかは保障できません。あくまで参考と捉えてください。 設定aとbの違いは、aは変速5ノッチと直結切・1ノッチが同じとする場合、bは変速4ノッチと直結切・1ノッチが同じとする場合です。

固定抵抗 抵抗@ 抵抗A 抵抗B 抵抗C
現在の設定
200Ω 430Ω 330Ω 240Ω 560Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 3.31V 4.81V 6.00V 7.50V
直結 4.75V 6.81V 8.31V 9.50V 11.00V
設定例 1-a (電圧差0.47V 最高5.00V)
200Ω 150Ω 75Ω 75Ω 300Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 1.72V 2.19V 2.66V 3.13V
直結 3.13V 3.59V 4.06V 4.53V 5.00V
設定例 U-a (電圧差0.62V 最高6.25V)
200Ω 200Ω 100Ω 100Ω 400Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 1.88V 2.50V 3.13V 3.75V
直結 3.75V 4.38V 5.00V 5.63V 6.25V
設定例 V-a (電圧差0.75V 最高7.25V)
200Ω 240Ω 120Ω 120Ω 480Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 2.00V 2.75V 3.50V 4.25V
直結 4.25V 5.00V 5.75V 6.50V 7.25V
設定例 W-a (電圧差0.94V 最高8.75V)
200Ω 300Ω 150Ω 150Ω 600Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 2.19V 3.13V 4.06V 5.00V
直結 5.00V 5.94V 6.88V 7.81V 8.75V
固定抵抗 抵抗@ 抵抗A 抵抗B 抵抗C
現在の設定-改 (電圧差1.37〜1.56V 最高11.19V)
200Ω 470Ω 220Ω 220Ω 680Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 2.63V 4.00V 5.56V 6.94V
直結 5.50V 6.88V 8.25V 9.81V 11.19V
設定例 T-b (電圧差0.47V 最高4.50V)
200Ω 150Ω 75Ω 75Ω 220Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 1.72V 2.19V 2.66V 3.13V
直結 2.63V 3.09V 3.56V 4.03V 4.50V
設定例 U-b (電圧差0.62V 最高5.63V)
200Ω 200Ω 100Ω 100Ω 300Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 1.88V 2.50V 3.13V 3.75V
直結 3.13V 3.75V 4.38V 5.00V 5.63V
設定例 V-b (電圧差0.75V 最高6.50V)
200Ω 240Ω 120Ω 120Ω 360Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 2.00V 2.75V 3.50V 4.25V
直結 3.50V 4.25V 5.00V 5.75V 6.50V
設定例 W-b (電圧差0.94V 最高7.81V)
200Ω 300Ω 150Ω 150Ω 450Ω
ノッチ 切・1 2 3 4 5
変速 1.25V 2.19V 3.13V 4.06V 5.00V
直結 4.06V 5.00V 5.94V 6.88V 7.81V


 このように抵抗値を変えれば電圧値を変化させる事ができますが、その際に注意すべき点があります。この3端子レギュレーターは、入力電圧と出力電圧の差が 大きい場合はそれが熱として発散されるので、特に最高電圧を低い電圧に設定した場合はフルノッチとした場合でも常に発熱していることがあります。そのため 最高電圧を設定したあとはACアダプター選びも重要となります。おおむね設定電圧+1.5V程度の規格のACアダプターをご用意していただければ大丈夫です。
 なお、この回路で使用している制御電圧についても、リレーの動作電圧に一致していれば変えていただいて問題はありません。ただ、入手しやすいリレーの 電圧はこの12Vのほかは5Vのものぐらい (あと、あっても9V) ですので、使用されるリレーの電圧でご判断下さい (もちろん全てのリレーの規格電圧は統一 してください)。

 最後に、皆様から新たな製作のご連絡が入りますことをお待ちしています。

過去の参考コラム...
本物マスコンで...前編・・・・・→ 本物マスコンで...予告・・・・・→ 本物マスコンで...完結篇(?)
きはゆに資料室長