特集 腕木式信号機 その2



腕木式信号機とは?
目次
@腕木式信号機とは
A腕木式信号機の種類
B腕木式信号機の付属品
C腕木式信号機の配置例
D腕木式信号機の現示と列車の運転

C 腕木式信号機の配置例

 ここでは腕木式信号機がどのように配置されていたかを再現してみます。ここにあげるのはあくまでも一例であり、 実際はもっと多様な配置がありました。
 配置例をあげる前に、配置例で使用する信号機の記号を左にあげておきます。出発信号機と場内信号機の違い(腕木の 長さの違い)は省略しています。配置されている状態を再現するため、それぞれの信号機を進行方向に対して倒しています。
 @ スプリングポイントなど、ある一定の方向のみにしか侵入できない駅の配置例です。遠方信号・場内信号・出発信号 が上下に1ヶ所ずつとなっています。ここでは通過信号もつけていますが、通過列車のない路線では通過信号はありません。
 A 2線ある両方に進入できるパターンの駅の場合はこのようになります。Y字分岐など、明確な通過線が設定されていない 駅などで見られる配置です。遠方信号は同じですが、場内信号機が2つあり、出発信号機も各線に設置されています。なお、 ここでは場内信号機を上下2段としましたが、2本の信号機が立っている場合も十分考えられます。
 B 線路の一方が通過線として設定されている駅の場合です。Aのパターンに通過信号を付け加えたものですが、この 場合は必ず場内信号は2本の信号機となります。また、通過信号機は通過線の場内信号機に取り付けられます。もちろん、 色灯式信号機と同様に本線側の信号機と待避線側の信号機とで高さに差を付けて進路を区別できるようにしています。
 C 駅の配線が増えると信号機の数もどっと増えます。ここでは3線になりましたが、信号機の数が目に見えて増えて います。場内信号機は本線に通過信号機を付け、その左側には左側線のものを立てています。右側線の信号機に関しては 線路の右側に立てることも多くありました。さらに進入線路の数が増えると2段の場内信号機や出発信号機が何列も立ち並ぶ すさまじい光景となることもありました。こうした場合になると信号機の「やぐら」が立てられることが多くなります。
 最後に、実際の駅の配置を再現してみました。これはその@で紹介した鍛冶屋線市原駅跡にある、資料館に保存されている 鍛冶屋線西脇駅の構内連動図表です。この右下の赤い枠で囲んだ部分は信号てこの配列で、それぞれのてこに対する信号機の 番号も書かれています。これを構内配線図に書かれている信号機の位置にあてはめると、以下のようになります。実際は このほかに遠方信号機もありました。
 1・2と7・8は場内信号機で、残りは出発信号機です。西脇駅では通過信号機はなかったようです。場内信号機の1と7は 1番線に対するもので、2と8は残りの線(分岐の非定位側)に対するものとなっていました。出発信号機のうち4と5は3番線に 対して設置されていますが、2・4番線に対してはどのように信号を出していたかは不明です。


D腕木式信号機の現示と列車の運転


 最後に、腕木式信号機と列車の動きについてまとめてゆきます。最初に説明したように、腕木式信号機は手動で操作するため 信号が変わるタイミングは微妙に異なる可能性はあります。また、下の図では灯火がついている状態としていますが、通常昼間は 灯火はついていませんのでご注意ください。ここでは最も簡潔にまとまった状態である信号配置である通過列車のあるスプリング ポイントの駅 (前項@のパターン) で解説をしてゆきます。
 最も基本的な、駅に停車する場合はこのようになります。場内信号機は進入する進路の信号機が「進行」となり、 遠方信号機も「進行」となります。場内信号機の下にある通過信号機は出発信号機が「停止」となっているため「注意」 となったままです。列車が停止し、タブレットを交換してから出発信号機が「進行」となります。このとき通過信号機は 「進行」とはなりません。
 急行や特急、快速など通過する列車の場合はこのようになります。遠方信号機と場内信号機は停止する場合と同じですが、 通過信号機は出発信号機が「進行」となっているため「進行」となります。このときタブレットの授受の準備を終了させている ことが前提となります。仮にタブレットの準備ができていない場合でも場内に進入させることはできるため、上の状態と することはできます。通過列車の信号手順は、場内+遠方を進行にする→出発+通過を進行とするという順序になります。
 タブレットを使用する非自動閉塞ではありえないことが前提ですが、先行列車が駅にいて進路がふさがっている場合です。 先行列車がいるため場内信号機は「停止」となります。場内信号機が「停止」となっているため、遠方信号機は「注意」と なり、場内信号機が「停止」であることを予告します。列車は遠方信号機で「注意」現示を認めても、ここで停止する必要は ありません。遠方信号機は場内信号機の予告に過ぎないため、停止する位置は場内信号機の停止位置となります。
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