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もっともありふれた腕木式信号機で、出発信号機です。腕木のサイズは900mmでやや短くなっています。同じ赤色で
形状も似ていることから場内信号機も同じように扱われますが、実際は腕木の大きさが異なっています。
最も多く設置され、
最後まで残ることが多いため鉄道公園や廃線・廃駅跡に保存されていることが多いのもこの信号機です。なお、この信号機は
鍛冶屋線市原駅跡で保存されているものです。 |
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上の信号機が場内信号機です。腕木の長さが1200mmですので、その大きさの違いがよくわかると思います。
下の信号機は腕木式信号機独特の信号機で、通過信号機と言います。通過信号機は出発信号機の予告をし、必ず場内信号機の
下にとりつけられます。大きさは出発信号機と同じ900mmですが、形が「三味線のばち」のようになっているのが特徴です。
また、通過信号機では「停止」はなく、「注意」と「進行」となっています。そのため腕木の色も黄色となっています。
通過信号機はすべての場内信号機に取り付けられているのではなく、急行など通過列車がある路線・駅に設置されています。
この通過信号機がない場合は出発信号機が停止ということを想定し、低速で通過しなくてはなりません(手信号で代用することも
ありました)。
JR線では因美線での使用が最後でしたが、現在でも小坂鉄道茂内駅でかろうじて残っています。
この信号機は門司港駅構内に保存されているものですが、通過信号機も博物館などで保存されていることが多い信号機です。
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最後に紹介するのがこの遠方信号機です。遠方信号機とは場内信号機を予告する信号機で、駅からかなり離れた場所に
設置されていました。腕木の長さは場内信号機と同じで1200mm、形状が「矢羽根」になっているのが特徴です。
通過信号機と同様に、遠方信号機でも「停止」はなく「注意」と「進行」を現示し腕木の色が黄色となっています。
遠方信号機は駅から数km離れていることもざらで、場合によっては隣の駅のすぐそばに設置されていることもありました。
このように離れた 場所に設置されるため、ワイヤーで操作する腕木式信号機にとって予想される腐食による切断や
たるみなどが原因による故障が発生してもわかりにくいという危惧がありました。そのため操作するワイヤーを2本に
するなど保安性を高めていましたがそれでも故障は発生し、色灯式信号機が多くの路線に設置されるようになると
腕木式信号機が残る路線でも遠方信号機だけは色灯式になることも多くなりました。下の信号機が色灯火された遠方信号機
です。信号機の「背」の部分の板が完全な長方形となっているのが特徴で、この場合も停止(赤)はありません。
このようなことから腕木式遠方信号機は現在では完全に消滅し、保存も極めて少ないうえ模型ですら忘れられた存在に
なっています。
この遠方腕木式信号機は大阪の交通科学館で保存されている極めて貴重なもので、数少ない保存例の一つです。
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