キハ37・38車両概要

キハ37について
 ディーゼルエンジンには「予燃焼室式」と「直接噴射式」という方式があり、国鉄で使用していたディーゼルエンジンは全て「予燃焼室型」でした。DHM17が設計された1940年代、船舶用など低速エンジンは構造が簡単な「直接噴射式」が使われ、鉄道用など高速エンジンには複雑な構造の「予燃焼室式」が使われていました。これは直接噴射式では満足な馬力を得ることができなかったためで、複雑な構造とそれによる重量増を差し引いても予燃焼式を採用するのが最良であったのです。
 それから30年以上経ち、直接噴射式のエンジンの技術も向上し、この方式でも高出力のものができるようになりました。このころ国鉄は経営合理化が叫ばれ、特に赤字ローカル線の風当たりは大変強く、廃止か大幅な合理化かの選択を迫られていました。そんな中、新たなローカル用気動車として計画されたのがキハ37だったのです。キハ37の特徴は国鉄で初めて「直接噴射式」のエンジンを採用したことです。「予燃焼室式」のエンジンはすでに大きな実績を積み、多くの機種を生み出していましたが、どうしても構造の複雑さによる重量増と高コスト、高い燃料消費量、そして寒冷地での始動性の悪さが難点でした。このころ「直接噴射式」エンジンが鉄道用にも使える程に技術が上がっていたため、漁船用のエンジンを改良してできたのがDMF13Sでした。
 こうして新機構を導入したキハ37は、台車や変速機も廃車された車輌のものを流用するなど徹底したコストダウンを図った車輌でもありました。1983年にトイレ付の0番台2輌とトイレなしの1000番台3輌が製造され、加古川線と久留里線に配置されました。どちらもオールロングシートで登場しましたが、セミクロスシートの車輌も計画されていました。しかし結局そのころにはローカル線は廃止され始め、国鉄自体の分割が叫ばれるようになりローカル線に新造車輌を配置すること自体ができなくなり、以後生産されなくなりました。


性能 (0番台/1000番台)
全長
全幅
全高
重量
定員
20000mm
2928mm
4080mm
31.6/30.7t
138/146人
エンジン
出力
台車(動台車/従台車)
便所
デッキ
DMF13S×1
230馬力
DT22/TR51
あり/なし
なし
製造期間
製造輌数
消滅年
保存
1983年
5輌
現役
なし

キハ38について
 通勤用気動車のキハ35系も国鉄末期になると、老朽化などにより客室設備や性能に問題が生じていました。その一方で新造車輌を作る余裕もなく、特にいつ電化されるかわからない通勤車輌では顕著でした。そこでキハ35を改造し、客室やエンジンを改良してこれから出現するであろう新車両に見劣りしない車輌にしようとするものでした。
 特徴はキハ37に続き、直接噴射式のエンジンを改良したものを搭載し、扉も電車のような3扉となって冷房までついたことが主な点です。このうちエンジンはキハ37のとき縦型で客室に点検ハッチを設けなければならなかったことからこれを横型とし、出力もアップしました。一方でコストダウンも同じように図られ、台車、変速機、運転機器などはタネ車のキハ35のものを流用しましたが、運転台と前面形状もキハ35から一新され、近代的なものに生まれ変わりました。
 キハ38は八高線用として高崎に配置されましたが、南側の区間の電化と北側区間のキハ110化によって活躍の場を追われ、キハ30や35が多く配置されていた久留里線に移って新たな任務についています。


性能 (0番台/1000番台)
全長
全幅
全高
重量
定員
20000mm
2928mm
3995mm
30.8/30.3t
124/138人
エンジン
出力
台車(動台車/従台車)
便所
デッキ
DMF13HS×1
250馬力
DT22/TR51
あり/なし
なし
製造期間
製造輌数
消滅年
保存
1986〜87年
7輌
現役
なし