ワム80000の模型

 2012年3月17日のダイヤ改正により、ワム80000の定期貨物列車の運用が幕を閉じました。末期では車軸をコロ軸受にした青い380000番台のみとなり、 茶色のワム自体が珍しい存在となっていました。しかし国鉄時代では最多製造のワムであったことから、趣味対象ともならない実にありふれた存在に すぎませんでした。一方模型の世界では貨車の代表格、特に二軸貨車では当然なければならない存在であり、Nゲージではもちろん、その他玩具系の 鉄道模型においても当然存在する形式でもありました。それだけに一概に「ワム80000」として発売されていても各社で微妙な違いがあり、また各社の 事情によってディテールの良し悪しが出てきます。この秋に毎度おなじみT社とK社がワム80000 (およびワム380000) を再販したことをふまえ、 この2社のワム80000を比較してゆきます。
 まず最初は実車のワム80000の解説をし、そのポイントをふまえた上で2社の模型の比較へと移ります。
(なお、ここで紹介する模型車輛のカプラーはすべてT社のものに交換しています)

 ワム80000は大きく分けて前期型と後期型が存在します。模型的なその違いは2か所あります。雨樋と軸距離です。
 これは小樽に保存されているワム80000の初期型 (ワム82506) ですが、水平方向の雨樋は取り付けられているものの、 垂直方向の雨樋はありません。また、この写真ではわかりにくいのですが、軸距離は5040mmです。
 吹田機関区内に留置されていた後期型ワム80000 (ワム284235) です。特徴は垂直方向の雨樋で、これが 前期型との大きな外観上の違いです。この雨樋は貨車の入換の際、ブレーキ扱いをする入換手に雨樋の雨水が降りかかってくるのを 防止するため取り付けられました。軸距離は260mm拡大され、5300mmとなっています。この画像の角度からはわかりにくいのですが、 屋根が白っぽい色になっているのもこの後期型の特徴です。
 まずはT社のワム80000です。1輌単品売りで、車番は284232です。今回は再販ですが、前回発売されたときに下回りが一新され、ブレーキテコや 足かけが表現されています。また、白っぽい屋根も再現されています。右の画像、緑矢印の部分には垂直方向の雨樋もモールドされており、 後期型の特徴をあますとこなく再現しています。

 こちらは同じT社のワム80000ですが、旧製品です。入換手用の足かけはついているものの、ブレーキテコや荷卸しのための足かけの表現は ありません。上の車体自体は同じものですが、問題は車番です。この旧製品では車番はワム89003となっていますが、これがとんでもない 問題車番なのです。
 そもそもよく目にしていたワム80000は実は二代目の形式で、初代が存在していました。とは言え、その初代とはこの二代目ワム80000の 試作車なのですが、二代目が改良の上量産されることが決定すると形式を「ワム89000」に変更しました。つまりワム89000は形式ワム80000では ないのです。しかもこのワム89000は3輌しかおらず、車番は89000〜89002となります。それでは欠番を付けたのか、ということになりますが、 事態はそれだけでは終わりません。1981年に後期型のワム80000 (ワム280000) において扉の破損事故が多発したため (後期型に変更の際に 扉がアルミ製になった)、扉を再び鋼板に戻し、その重量増加分を別の部分の軽量化を図る試作車が製造されました。本来ならば二代目ワム80000の 試作車となりその系列の試作車番が付与されるべきなのですが、試作車仲間であるためかワム89000の形式を与えられ、しかも初代ワム80000の 続き番のワム89003が付けられることになりました。つまり、ワム89003は存在し、外観もほぼワム80000後期型と同一ではあるが、あくまでも 形式は「ワム89000」であり「ワム80000」ではないのです。偶然なのか、意図的なのか、勘違いなのか、今となってはわかりませんが 今となっては貴重、かつ使いづらい車輛です。
さて、こちらはK社のワム80000です。2輌セットでの発売でワム286723とこのワム283912です (これは中古で買いましたので286723は 持っていません...)。先ほどのT社のものと比較していただくと一目瞭然ですが、この車輛には雨樋がありません。また、屋根も 白っぽい色にはなっていません。足回りについてはT社と同じく前回から改良され、ブレーキテコや荷扱い用ステップのある ものになっています。ただ、雨樋がない車体ですので、後期型の280000台の車番はNGとなります (屋根の塗装の問題は許したとしても)。
 こちらはK社の旧製品です。車番はワム183121で、見事に前期型の車輛となります。また、幸か不幸か新製品に比べ軸距離も短く、 前期型の特徴をふんだんに見ることができます (実際の差は240mmなのでややオーバースケールかもしれませんが)。ただ、足回りの付属物が かなり残念で、T社では一応あった入換手用の足かけもありません。足回りの再現は新製品が、車体は旧製品がベストなのですが、これが うまくいかないところがK社らしいところなのでしょうか...。
 T社とK社のワム80000にはもう一つ別の問題があります。それは車体高の問題です。左がT社、右がK社のワム80000ですが、K社の方が 背が高く、T車の方が低くなっています。もちろん、T社の方は屋根色が白っぽいので背景に溶け込みより低いように見えますが、それでも T社の方が車体高が低くなっています。実際のところ、前期型と後期型では車体高の変化はあったようですが、その差は30mm程度でこれほどまで 大きいものではありません。ただ、一つ注目できるのは台枠との接続部分です。K社では台枠との接続部分の表現が大きく (厚く) T社のそれは 小さく (薄く) なっています。まぁこれもこの高さの差に比べれば...という話になるのかもしれませんが。
 ...とまぁこんな感じで比較をしてみましたが、いかがでしょうか?皆様はどちらを選ばれますか?私はどちらもアリだと思います。 T社のワム80000は後期型としてそのまま使えますし、K社のものは車番を変えればおおむね前期型のワム80000として使えると思います。 注意するとすればT社とK社のものを隣り同士で連結させないこと (理由はもはや言うまでもありません)。あと、それぞれ車番には気を 付けること、です。車番に関しては改造パーツの準大手 (?) からワム80000 (実質280000) のインレタが発売されていますし、バラの車番の インレタも数社から発売されています。あとの問題は元の車番をどうやって消すか、というだけです。これが意外と難しくて...。
 最後になりましたが、ざっくりとしたワム80000の車番の一覧を表記して終わります。

    80000〜80004・188802〜188806―試作車
    80100〜88999・180000〜188801―前期型
    188807〜188818―オートバイ輸送専用車
    280000〜288499―後期型
    380000以降については省略
きはゆに資料室長