今日、様々な買い物のついでに河合商会の貨車を買いに某家電量販店の模型店に行きました。目当てのものは
あるかどうかわからなかったのですが、そこで予想もしていなかったことが起きていたのです。模型店の
河合商会の模型があったコーナーに行ってみると、そこにはT社のレイアウトパックなどが置かれ、河合の
商品はどこにもありません。よく見ると、棚にこのような張り紙がありました。 「河合商会の自己破産申請により、同社製品の販売を中止します」 えっ?!自己破産!!ということは...つまり...倒産した、ということ!! そうなんです。帝国データバンクの情報によると、河合商会は10月15日までに事後処理を弁護士に一任し、 自己破産を申請へと向かう...とのことです。自己破産に至った経緯はリーマンショックによりアジア向けの輸出が 減少し、得意先(海外の法人か?)の倒産のほか、東日本大震災の消費自粛や円高により採算が悪化し、事業継続が 困難になった、ということです。 19日現在で河合商会のホームページにも自己破産申請については何も書かれていませんが、店頭の掲示は間違いでは なさそうです。ただ、この店では販売を中止しましたが、別の店では販売を続けており、店によっては対応が違うようです (仕入れの方法など事情により、債権者となる可能性があるためなのかもしれませんが)。ですから今すぐ (またはすでに) あらゆる模型店の店頭から河合商会の商品が消えてしまっている、ということではありませんが、今後の入手は困難と なるのは間違いありません。 河合商会の鉄道模型の大部分は貨車のため、貨物列車を再現しない方にとってはあまりなじみはないかもしれませんが、 本物の種を使いジオラマを作る「箱庭シリーズ」や、屋台や街角の店などの「風物詩シリーズ」といったプラモデル製作のほかに、 「ガイアノーツ」という塗料の販売 (海外向け輸出総代理店であり、国内向けは卸の1社にすぎず、製造元でもない) も行っています。 このほか、戦車や戦闘機、バイク、ラジコンカー、輸入玩具、さらにはOEMの請負など、その事業は多岐にわたっています。 鉄道模型はその一部門で、その売り上げは全体の何割を占めていたかは不明ですが、模型メーカーが1社なくなるというのは 大きな衝撃です。怖いのは、これがほかのメーカーに波及するかもしれないというところ。特に「一応車輛なんかも発売 しているけれど、あまりパッとしない」会社...。まぁ、どことは申し上げませんが、鉄道模型専業であっても、 別の模型も手掛けてしたとしても、このご時世ですからフタを空けてみたらこんなに負債が...ということがあるかも しれません。最近在庫や値引きが多いな〜と感じるメーカーはひょっとしたら...ということがあるかもしれません。 ところで、河合商会の模型にはそれなりの魅力がありました。まずは大手メーカーが手を付けていない車輛を販売して いたことです。ただ、これも一昔前の話で、最近になりこれが次々と打ち破られてきました。そもそも河合商会の車輛は もともとT社が香港で製造していたシリーズの金型を使っていたもので、その出来も20年ぐらい前のまま、という感じでした (まぁ、どこかの大手さんもずっと金型を変えていないことがありますけどね) 。それだけならともかく、車体表記も ちゃんとした文字の再現ではなく、適当に似ているフォントを使ったものであったため、近づいてみると見栄えが悪く、 さらにセット売りであってもすべて車番が同じということもありました。ただ、これは香港金型の製品に限ったもので、 最近力を入れていた (ような) 化学物質系のタンク車については独自の金型を製作し、表記も忠実に再現し、私有する 各社のロゴ (って言うのか?) もちゃんとついているしっかりとしたものでした。ただ、そのような製品は好き嫌いが はっきりするうえ手間がかかる割にはそれほど売れるものではなく、会社や車番が限られてしまうので大量購入することが ないという不利な面がありました。 また、香港金型の車輛については既出の理由のほか、最近次々と大手メーカーが販売に 乗り出してきたことで一層売れなくなったと推察します。一例をあげればカ3000やポム1、ツム1000など、河合にしか なかったものが次々と製品化されました。それも金型はもちろん新規のものですし、標記類も忠実に再現されています。 さらにT社では戦時設計のワム50000まで製品化を予告しており、今後も貨車の充実は進む見込みです。 実は私が今回購入しようと思ったのはワム60000で、現在のところ大手メーカーからはまだ発売がされていない製品でした。 実物においても数は相当数製造されましたが、ワラ1とワム70000、ワム80000のそれぞれに中途半端に似ているので製品化は されないと予想している車輛です。河合商会の自己破産によりこのような製品化の乏しい車輛は今後入手が困難になります。 ほかにはラッセル車のキ100、荷貨物兼用のワキ1000、ワムフ100、初期型無蓋車のトラ25000・35000などです。 キ100やワキ1000・ワムフ100あたりは製品化も考えられますが、他については製品化されている車輛との差があまりなく、 大々的に売り出すようには思えません。そもそも「黒い貨車」がどれだけ売れるのか、という問題もありますし。 模型会社が1社自己破産になった、ということは日本経済にとってはそれほど大きいことではないかもしれません。 けれども鉄道模型界においては大きな問題をはらんでいます。それは単にある車輛が入手できなくなった、ということだけ でなく、鉄道模型業界においても再編が進み、片手で数えられるほどの会社以外は倒産、または事業撤退となる可能性を 含んでいます。それはわれわれ購入者にとっていいことなのか悪いことなのか、まだわかりません。ただ言えることは、 その再編が落ち着くまでは、少し面倒なことになるかもしれない、ということです。 参考リンク 帝国データバンク倒産速報 河合商会ホームページ |
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きはゆに資料室長 |