大正100年

 1912年7月30日。この日明治天皇が崩御し、翌日の改元に伴い前日、即ち7月30日から「大正」の時代が始まることとなりました。そして今年は2012年。 そう、大正元年から100年となったのです。

 昭和生まれの室長にとっては、一方の祖父母が明治生まれだったこともあって大正は明治ほど遠くないイメージがあったのですが、もはや「明治」は 100年以上も前の話になってしまったのです。早い話が「いつの生まれですか」と訊いて「明治です」と言われれば、その方は100歳以上と簡単にわかる ようになったのです。今でこそ人の100歳は珍しくなくなってきた (こともないか?) のですが、鉄道においてはどうでしょうか?
 車輛で考えると客車はまだ木造。マッチ箱と呼ばれる2軸の客車もまだ現役のころです。それを牽引する蒸気機関車は多形式少数生産のいわゆる 「古典機関車」たちで、まとまった数の蒸気機関車はB6ぐらいでした。9600や8620が誕生するのは大正2〜3年あたりです。電気機関車は碓氷峠の アプト機関車 (のちのEC40) ぐらいで、電車はというとボギー車は存在したものの、ほとんどが2軸単車でした。これらの車輛で動態保存されて いるのは極めて稀で明治村の蒸気機関車 (運休中) と日本工業大学のB6 (2109) ぐらいです。静態保存であれば各博物館に古典機関車や古典客車が保存されて いますので、全く見ることができないわけではありません。

 そういう意味では鉄道施設は長生きです。鉄橋やトンネルも調べてみると明治や大正の生まれだったということもありますし、もし架け替えられて いたとしても、その橋台や橋脚は当時のままということもあります。鉄道施設としてではなく、道路橋や跨線橋などに再利用されている鉄橋もありますので 様々な場所で100歳のものが現役で活躍しているかもしれません。
古い明治の物の象徴としてはいわゆる「赤レンガの建築物」などもそういった範疇で言われることがありますが、東京駅が大正3年の開業であることから、 赤レンガ=明治とは限りません。けれども駅舎では意外と古いものがローカル線にあったりするので、見た目よりも路線の歴史から着目する方がいいかも しれません。比較的近代的な駅であっても明治生まれのものが現役ということもあります。それはホーム屋根に使われている「古レール」です。古レールには 製造年が記銘されているので、それを発見できればそれがいつの物なのかは簡単に判断できます。大垣駅では1900年や1893年のものもありましたからね〜。 古レールはホームの屋根以外でも踏切や跨線橋などで使われていることがありますから、思わぬところで思わぬ骨董品が使われていることがあるかもしれません。

 明治時代には主要路線は開業 (私鉄時代としても含む) していますので、路線の開業自体は既に100年を超えているものが少なくありません。現在の私鉄でも 明治期に誕生している会社は多く、鉄道の歴史は意外と長いということを改めて感じさせられます。
 考えてみれば今年は平成24年。国鉄消滅・JR発足から25年。戦後67年。昭和87年。大正100年。鉄道開業140年。明治144年...。時間は今も止まらず 刻一刻と流れているんですね〜 (しみじみ)。なーんてボヤボヤ生きていると、すぐに昭和100年を迎えてしまいそうですが...。

きはゆに資料室長