東西の地下鉄

 日常的に東京の地下鉄を利用しない方が利用すると、多かれ少なかれ混乱が生じます。日常的に利用する方であっても いつも利用する路線とは別の路線を利用する場合、スムーズに乗車できるという方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか? あ、もちろん「乗り換え案内」などのナビは使えない、ということが前提ですよ。このナビがあっても、路線の乗り換えルートなど 詳しいところまではわからないと思いますし...。

 その一方で大阪の地下鉄はというと、路線は東京よりはやや少ない程度ですが、難易度は東京よりもはるかに低いと思います。 その理由は路線図を見れば一目瞭然でしょう。大阪の場合は中心部はほぼ平地で、大きな通りも京都のような碁盤の目状に東西に 走っているため、地下鉄の路線も中心部においてはほぼ碁盤の目状態になっています。一方東京の場合、山あり谷ありの複雑な地形と 皇居 (江戸城) を中心にした道と町並みのため、否応なしに曲がりくねった路線となってしまっています。さらに東京の方は まだまだある需要と資金により、路線がどんどん増えたことで近接・重複する路線区間が多くあります。また、乗換駅に接続する 路線数は、大阪の場合「本町」と「なんば」だけが3路線 (梅田は西梅田、東梅田の計3駅が別駅扱いとなっているので除外) だけですが、 東京の場合は3路線接続だけでもかなりの数があり、最高5路線接続となっています (大手町駅)。

 東京独特の混乱ポイントは他にもあります。大阪の場合別の路線に乗り換えるとき、階段を2回ほど上り下りすれば目的の路線のホームに たどり着けますが、東京のものはこんなに簡単にいくことは少ないです。
 パターンその1―別の路線のホームを経由して目的の路線のホームに着く。
最初東京の地下鉄を利用した時に驚かされたのがこれでした。3線接続が普通になっている東京では別の路線のホームを通って乗り換えることが あまりにも普通になっているのです。しかも20m級の車輛が10輌というのがざらではない東京の地下鉄。ホームの端から端までとなれば 乗り換えだけで1駅歩くぐらいになってしまいます。
 パターンその2―一度改札を出る。
乗り換えの路線によっては一度改札を出て乗り換えなければいけない駅 (路線) があるのです。それも結構...。これがメトロと都営ならば わかるのですが、メトロ同士でこのようなことがあるのです。しかもこれがどこの改札を使ってもいいのならば問題はないのですが、乗り換え用の 改札機を通らなければ切符が回収されてしまうという恐ろしさ...。改札機の種別の気にせず通ることができるのはフリーきっぷだけです。 もちろん、一度改札を出て乗り換え先の改札に着くまでにデパートで買い物をして〜なんてことはできません。時間制限があるのでさっさと 乗り換えなければならないのですが、こういう駅に限って地下街が複雑なのです...。もちろん、表示されている案内を見て行けばたどり着けますが 初めて体験する場合結構混乱します。
 このように大変な面を羅列しましたが、一方で階段を上がれば (下りれば) すぐホーム、という駅もあります。東京の地下鉄の難易度に身構えていると、 こうした駅に出会うと拍子抜けしてしまいます。

 東京の地下鉄の複雑さは相互乗り入れという面からもあります。鉄道好きの場合であれば、1つの路線で複数社の車輛が堪能できる楽しい路線(?) ですが、相互乗り入れをちゃんと把握していないととんでもないことになってしまいます。
 大阪の場合は相互乗り入れはほとんど行われておらず、堺筋線と阪急、中央線と近鉄、御堂筋線と北大阪急行のみです。このうち御堂筋線と 北大阪急行については相互乗り入れという感覚ではなく、途中から別の事業者に切り替わったという感覚にすぎません。そもそも、堺筋線―阪急以外は 第3軌条式のため、相互乗り入れと言っても地下鉄の要素が色濃いものとなっています。
 一方、東京の方は正反対で、都営大江戸線と第3軌条式の銀座線と丸ノ内線以外はすべて相互乗り入れが行われています。しかも両端において乗り入れが 行われていることも多いため、地下鉄内は3社の車輛が乗り入れることも多くあります (京急―都営浅草線―京成など)。しかし両端で接続している場合は まだ方向が異なるため大きな混乱はないと思いますが、同じ方向に相互乗り入れがある場合では、降車駅と乗る列車の行き先、会社をしっかりと把握 しておかなければなりません。有楽町線と副都心線がこの例です。この2線は東武と西武が相互乗り入れをしており、途中の小竹向原 (メトロ駅) で東武方面と 西武方面に分岐するのですが、このように地下鉄内で分岐するため別路線に乗り間違えたということに気付かない可能性が大きくなります (もちろん アナウンスはするのでしょうけれど)。
 ただ、複雑な相互乗り入れではありますが、慣れてしまえば便利なものです。都心まで乗り換えなしで行くことができますし、複数社の乗継も改札を出ずに 行うこともできます。大阪で相互乗り入れが少ないのはほとんどが第3軌条式であることもありますが、大阪市の縄張り意識によるものも大きく影響しています。 それは、大阪市内の交通は大阪市が執り行うので私鉄は入ってくるな、というもので、私鉄の市内延伸の許認可にも大きく影響を及ぼしました。堺筋線と 御堂筋線に関しても結局は万博輸送のため、という意味で渋々相互乗り入れを行ったというのが現実だと思います。

 わかりにくいけれど郊外からでも使いやすい東京の地下鉄。わかりやすいけれど郊外からは不便な大阪の地下鉄。いい面、悪い面それぞれ特色があります。 どちらがいい、悪いというのは簡単には決められないのですが、情報を把握し、慣れてしまえばどちらも有用な交通手段であることに変わりありません。
 ただ、個人的に言うとすれば...
東京の地下鉄のエスカレーターは長すぎて怖いっ!!

きはゆに資料室長