青春18きっぷの行末

 6月24日付の新聞で「青春18きっぷ30周年」という記事があり、読んでみると近年発売数が落ちているとのことで、ふと考えてみました。 記事にはその原因として昨年の震災や格安バスツアーの影響、夜行を含む長距離列車の減少、ロングシート車の増大などが書かれていました。 確かにこれらは青春18きっぷにとっては大きな減少要因となりますし、鉄道旅自体にとっても減少要因となります。ただ、記事の中ではこれらの 原因に対してどのようにすればいいのか、というところまでは踏み込んでいません。それに代えて六角精児さんと横見浩彦さんのインタビューが ありましたが...。まぁともかく、今回は当資料室なりに青春18きっぷの行末を無責任に真剣に考えていきたいと思います。

 青春18きっぷが誕生した30年前とキップ自体に何が変わったかを書き出してみます。値段(8000円→(中略)→11500円)、販売形態(1日(回)×3枚 +2日(回)×1枚→(中略)→1日(回)×5枚→5日(回)×1枚)、名前(これはどうでもいい)...。値段については2007年にJR20周年ということで 発売当初の8000円になり、その年だけは売り上げがグンと伸びました (この価格は春の発売のみ)。まぁ、簡単に言えば安ければ売れるということです。 格安のバスツアーに対抗するのであれば、格安の切符を売って対抗する。ある意味当たり前の戦略ですが、そう簡単でないこともすぐわかります。安売り 競争に入るとどうしても無理が重なり、短期的には売り上げが増えても長期的な伸びは見込めず、逆に値上げに戻ると売り上げは急落します。また、 価格で対抗するには厳しい安全体制が至上命題である鉄道は、何でもござれの格安バスツアーには圧倒的に不利です。命を落とす寸前まで経費を削る 相手に、対抗できる手立てはありません。
 それでは発売形態を変えるというのはどうでしょう。かつて1回×5枚から5回×1枚に変更がされたとき、大きな反発がありました。これは 単純に残った分を処分できなくなるということだけでなく、グループで行動する場合に不便になるからという面もありました。たとえば1回1枚の 場合だと、各々最寄駅から青春18で乗車し、集合場所に集まって目的地に行き、目的地で自由行動とすることも帰路を別にすることもできました。 しかし現在ではそれぞれが青春18を持っていない限り、全員が同じ場所から乗車し、同じ経路をたどり、同じ場所で降りなければなりません。したがって、 旅の始まりである集合場所へ向かうのにも別に切符を買わなければならないのです (帰りのことも考えれば実質往復分必要です)。
 また、日付印が グチャグチャになってわかりにくいという問題もあるので、いいかげん1枚に押し込めるのは限界だと思います。しかも最近ではきっぷ本体以外に 約款が何枚もついて、5枚発券のような状態になっているのも妙なものです。一方、JR側の分売対策と思われるこの1枚圧縮策ですが、ちょっと 大きい金券ショップであれば、一部使用済み券を割高で販売しており、むしろ利用者だけが損をこうむっているだけとなっています。

 そこで考えたのがこの2つの問題を解決する折衷案です。そのモデルとなるのが「鉄道の日きっぷ」です。このきっぷは鉄道の日があり、青春18きっぷが 発売されない秋に発売されるもので、全国版では3回分が1枚で9450円となっています(JR西日本限定のものは1回1枚で3000円)。1枚単価では3150円と 青春18きっぷの2300円よりはやや高めですが、一人で使い切るにはちょうどいい回数と金額であると思います。そこで青春18きっぷについても 2〜3回で1枚とし、1回当たりの単価は2500円と現在よりもやや高くなるのは容認するとしても、5000円、または7500円とわかりやすく買いやすい金額にし、 1万円を超えないようにします。最近の旅の傾向は安近短ですから、1万円の切符は手軽に購入できるものではありません。また、グループでの使用も 1枚で使用する人数が少ないほうが使い勝手はいいはずですし、夫婦や核家族でのお出かけにも使われる可能性は広がります。1枚の使用回数を減らせば 日付印の押印場所も小さくなり、空いた場所に約款を入れるなど整理すれば、捨てるだけの約款券も最小限にできます。重要事項がきっぷに書かれていることも トラブル防止の点でよいことだと思います。

 単価が高くなったことでJRは増収となり、利用者にとっては発売金額が安くなって1枚の利用回数も少なくなったことで使いやすく、どちらにも 得になると思うのですがみなさんはどうお考えでしょうか?実際このような変更が行われることはないと思いますが、悪い方向、つまり廃止にならないので あれば今のままでもいいと思います。きっぷ自体を変えなくても、乗りたいと思わせる列車、車輛、車窓があればいいのですから。

きはゆに資料室長