2番じゃダメですか

 今の時期になると「鉄道の日」の関係で各地で鉄道会社のイベントなどが開催されるわけですが、各種のイベントの中でも一種独特の盛り上がりを見せるのが 鉄道用品の販売です。最近では廃車発生品ではなく、各車のオリジナルグッズのみを販売することも多くなってきましたが、とりわけ空気感が異なるのが 廃車発生品の販売です。購入する目的に人は自分の順番までに手に入るか、何かめぼしい物はあるか、といった感じ。購入しない人は何でこんな物がこんな値段なの? 買ってどうするの?えっ、本当に買ってる?!といった感じ。ここまで空気感が違うのもすごいものです。まぁ、そんな空気の中にいる私は...なのですが。
 そんな中、11月5日には吹田工場でもイベントが行われ、部品販売も行われます。この吹田工場の販売は一般販売とオークションがあり、このオークションでは 由来のわかる車輌部品 (車番が記されているのではなく、販売側の発表) や車輌の目に付くところにあるパーツなどで、自ずと高価となります (なお、一般販売は 事前応募のより抽選で整理券が割り当てられ、その対象者への販売が終わり次第、整理券なしでも購入が可能になります)。このオークションに出品される品物が 先日発表されましたが、その中にクハ103-2の部品が数点出品されているのです。
 クハ103-2はクハ103-1とともに今年3月に日根野で廃車となりましたが、末期にはクハ103-1とともに編成を組み、登場当時を再現したかのような姿となって いました。それゆえ将来新たな展示施設が完成した折にはペアでの展示も期待していただけに、この出品はその期待を消し去るものになりました。せっかく 1と2がそろっているにもかかわらず、保存されなかったのは残念でなりません。

 そもそも、保存される車輌において「2」という車輌はあまりなく、最若番が2であっても保存されないこともあります。もちろんD51やC62、新幹線など 人気のある車輌では1と2、さらにはその続きも保存されていることもありますが、基本的に保存すべき車輌はトップナンバーか最後に残った車輌という場合が 多いです。特にトップナンバーが残っている場合は2が保存されることは稀で、よほどの事がなければ保存されないようです。今回もこのパターンとなりますが、 はたして2番はそれほど保存すべき価値はないのでしょうか?
 2番であっても保存したいと思う場所があればそこに提供すべきでしょうし、特に電車であれば製造されたときからのペアである事が多いのですから、そろって 保存をする価値はあると思います。2番で悔やまれるのがキハ55の例です。キハ55-2は高松で廃車となりましたが、実は最後のキハ55だったのです。最若番かつ 最後の車輌にもかかわらず廃車解体となってしまいました。ただ、当初から保存する目的がなかったのはさよなら運転で「ペイント列車」と言う名の落書き列車と なったことからも伺えます。深読みをすると、このキハ55-2は事故により前面を作り変えており、そういう理由から保存車から外れた (外観上、経緯上など) とも 考えられます。ただ、実際は財政上の理由で保存する余裕がなかったとか、保存する施設がない (現在でこそ西条に展示施設が出来ましたが) ということだったと 思われます。同様のことはキハ28-2002でも言えます。キハ28の場合は最後の車輌ではなかったものの、言わずもがなのナンバー2です。車内はセミクロスシートに 改造されましたが、現在多度津工場で保存されているキハ58-293もセミクロスシート改造がされているものの保存されています。この場合は最後の営業運転をした キハ58で国鉄色だから、ということもありますが、せっかくの車輌を保存しなかったのは残念でなりません。
 車番「2」ではありませんが、「2番目」にあたる車輌のパターンもあります。糸魚川にいたキハ52の例です。糸魚川のキハ52は115と125、ラストナンバーの 156が配置されていて、115は津山に、156は地元で保存されることになりましたが、125の処遇は当初決まっていなかったのです。最終的にいすみ鉄道に譲渡される ことになりましたが、もしこれが決まっていなければ解体されていたところでした。一方で解体されてしまったのが鹿島鉄道のキハ602です。鹿島鉄道のキハ602は ドアがオリジナルに近いプレスドアで、大宮工場製という珍しい車輌でしたが、保存はキハ601のみで解体されてしまいました。

 保存車輌においてトップナンバーは説明要らずの存在ですが、トップナンバーがいない場合どの車輌を保存するかが問題になります。トップがいなかったら ラストナンバー。最後まで残った車輌。原形をよくとどめている車輌。大方このような方向ですが、それでは2番目の車輌を、ということにはなかなかなりません。 けれど2番目の車輌は古さではトップナンバーと同様であり、貴重さではトップナンバーに引けはとりません。現在ナンバー2が保存されている例においても 「人気車輌なので2でもいいから」「残ったのは2しかないから」といった具合で、消極的な理由しかありません。唯一C62が1と2が同じ梅小路に保存されている 例ぐらいしか、ナンバー2である必要な例はありません。機関車や気動車の場合であれば単独で使用するものも多いことから1と2をそろえる必要性は低いのですが、 電車となると別だと思います。残念ながら電車の保存例で1と2がペアで保存された例はありません。確かにスペースの関係上2輌を繋げて保存・展示することは 難しいのかもしれませんが、電車の編成美としては片運転台の先頭車だけ、というよりも両側に運転台がある姿のほうがいいと思うのです。典型的国鉄型車輌では 最後の1・2揃いとなるはずであったクハ103だっただけに残念です。
 なお、車番「2」の保存車は、思い浮かぶだけで以下のものがあげられます (国鉄の車輌に限る)。
C12 三笠鉄道村 他にも保存例あり
C61 梅小路蒸気機関車館 他にも保存例あり
C62 梅小路蒸気機関車館 1・2ともに保存
D51 交通科学博物館 他にも保存例あり
E10 青梅鉄道公園 唯一の保存例
ED11 リニア鉄道館 唯一の保存例
ED18 リニア鉄道館 唯一の保存例
EF53 碓氷峠鉄道文化むら EF59復旧
クモハ101 鉄道博物館 車番902(試作2番目)
21系(新幹線) 鉄道博物館 他にも保存例あり
きはゆに資料室長