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震災から2ヶ月になろうとしていますが、被災地、特に津波被害が甚大な地域では復興がなかなか進まない状況にあります。さらに原発に端を発する
放射能の問題は深刻さが増し、こちらの見通しは地震・津波被災地以上にたっていません。鉄道においても新幹線をはじめ、内陸部の路線は順次復旧が
進み、徐行運転や運転本数の減少はあるものの地域の足として、物流の要として元の姿を取り戻しつつあります。ただ、こちらの場合でも津波被害に
あった地域では復旧作業は進まず、被害の大きさを物語っています。ただ、こうした鉄道に特化した被害はなかなか報道されておらず、どのような被害が
発生しているのかよくわからない状態です。線路や駅、車輌の被害。それらの詳しい状況を知る手立てはないのか...と問われれば、なくはない、というのが
答えです。その手段がグーグルアースです。
グーグルアースはグーグルが人工衛星からの写真をもとに、地球上ほぼ全ての地域の様子を見る事が出来るものなのです。撮影された写真の時期や
解像度はまちまちですが、この被災地域においては大部分が震災後のものに更新されています。そのため被災した鉄道の様子がほぼ全ての路線において
見る事ができ (一部は震災前のままで更新されていません)、被災したり取り残された車輌の状況もわかります。
これを使って鉄道の被災状況を調べてみました。グーグルアースでわかる被害状況は主に津波被害など、かなり大きなダメージに限られるので、地震だけに
起因する路盤のゆがみなどはわかりにくくなっています。しかしこうした大きな被害が各所にあり、いかに被害が大きいかがよくわかります。 なお、
鉄道施設の被害についてはあまりにも多いため、震災発生当時14時46分に走行していた列車に限って検証すると以下のようになります。
列車番号 |
区間・駅 |
列車状況 |
被災 |
備考 |
状態
|
撮影日 |
折返し時刻が 迫っている 場合は「〜」で つないでいます |
時刻表上の 列車位置 |
直前・後-±1分 前・後-±2分以上 |
○ 見た目は無事 × 大きな被災 ― 復旧後により不明 ? 存在確認できず |
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画像判断 による列車の 位置・状態 輌数など |
画像の撮影日 |
東北本線(郡山〜一ノ関) |
1147M |
郡山 |
始発前 |
? |
1453発 |
参考にならず |
2010/7/28 |
1145M |
金谷川 |
発直後 |
? |
|
参考にならず |
不明 |
579M |
白石 |
停車中? |
○ |
|
白石 4連留置 |
4月6日 |
447M |
長町 |
発直後 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
3575M |
仙台→東仙台 |
|
― |
快速 |
復旧 |
4月6日 |
537M |
瀬峰 |
発直後 |
○ |
|
瀬峰-梅ヶ沢 2連 |
4月6日 |
535M〜538M |
一ノ関 |
折返 |
○ |
|
一ノ関 4連留置 |
4月6日 |
|
536M |
小牛田 |
停止中? |
○ |
|
小牛田 6連留置 |
4月6日 |
1568M |
松島→塩釜 |
中間 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
4446M |
新利府 |
発時刻 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
1566M |
岩切 |
着直前 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
1346M |
仙台 |
発車前 |
― |
1448発 |
復旧 |
4月6日 |
584M |
館腰 |
発直後 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
440M |
北白川 |
発時刻 |
? |
|
不明 |
4月6日 |
582M |
東福島 |
着直前 |
? |
|
参考にならず |
不明 |
1148M |
杉田 |
発時刻 |
? |
|
参考にならず |
不明 |
|
常磐線(いわき〜仙台) |
246M |
亘理→浜吉田 |
中間 |
? |
|
不明 |
4月6日 |
貨物 |
浜吉田→山下 |
|
× |
|
コキ15輌?流失 |
4月6日 |
244M |
相馬 |
発直後 |
× |
遅れ? |
新地 4連流失 |
4月6日 |
242M |
小高→桃内 |
|
? |
|
不明 |
3月18日 |
672M |
久野浜 |
着直前 |
○ |
|
久野浜-上野方 4連 |
3月18日 |
|
669M |
広野 |
着直前 |
○ |
|
広野 4連留置 |
3月18日 |
677M |
原ノ町 |
終着直後 |
? |
|
画像不鮮明 |
3月14日 |
253M |
原ノ町 |
始発前 |
? |
1450発 |
画像不鮮明 |
3月14日 |
251M |
逢隈→岩沼 |
|
○ |
遅れ? |
逢隈 4連留置 |
4月6日 |
249M |
仙台 |
終着後 |
― |
1440着 |
復旧 |
4月6日 |
|
|
仙台空港鉄道 |
3344M |
名取 |
発時刻 |
― |
快速 |
復旧 |
4月6日 |
1342M〜1343M |
仙台空港 |
折返 |
? |
|
上屋により不明 |
4月6日 |
1341M |
名取 |
発時刻 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
|
|
仙石線 |
1321S |
石巻 |
着時刻 |
○ |
|
石巻 4連留置 |
4月6日 |
3353S |
野蒜 |
発時刻 |
○ |
快速 |
野蒜-陸前小野 4連 |
4月6日 |
1441S〜1446S |
東塩釜 |
折返 |
○ |
|
東塩釜 4連入換中? |
4月6日 |
1421S |
下馬 |
発時刻 |
○ |
|
西塩釜 4連留置 |
4月6日 |
1461S |
中野栄 |
発時刻 |
○ |
|
中野栄〜多賀城 |
4月6日 |
1443S |
陸前原ノ町 |
発時刻 |
― |
|
地下区間 復旧 |
4月6日 |
1326S〜1463S |
あおば通 |
折返 |
― |
|
地下区間 復旧 |
4月6日 |
1462S |
宮城野原 |
発直後 |
― |
快速 |
地下区間 復旧 |
4月6日 |
1444S |
福田町→小鶴新田 |
中間 |
― |
|
復旧 |
4月6日 |
3358S |
多賀城 |
着直前 |
○ |
|
多賀城 4連留置 |
4月6日 |
1426S |
野蒜 |
発時刻 |
× |
|
野蒜-東名 脱線・流失 |
4月6日 |
|
|
石巻線 |
1641D |
涌谷→前谷地 |
|
○ |
|
前谷地留置 |
4月6日 |
1639D |
女川 |
終着直後 |
× |
40×1 |
女川 単行流失 |
4月6日 |
|
|
気仙沼線 |
2943D |
志津川→清水浜 |
中間 |
? |
|
トンネル内? |
4月6日 |
|
2942D |
松岩 |
発直後 |
× |
|
松岩-最知 2連流失 |
4月6日 |
2940D |
前谷地 |
着直前 |
○ |
|
前谷地留置 |
4月6日 |
|
|
大船渡線 |
333D |
鹿折唐桑→上鹿折 |
中間 |
? |
|
不明 |
4/1・4/6 |
3335D |
一ノ関 |
発時刻 |
― |
快速 |
復旧 |
4月6日 |
|
3336D |
折壁→千厩 |
|
― |
快速 |
参考にならず |
2010/6/25 |
|
|
南リアス線 |
215D |
吉浜→唐丹 |
|
○ |
|
トンネル内? |
4月1日 |
|
214D |
盛 |
終着後 |
○ |
|
盛 入庫? |
4月1日 |
|
|
釜石線 |
651D |
新花巻 |
着直前 |
― |
|
参考にならず |
2006/9/21 |
|
3626D |
小佐野→岩手上郷 |
|
? |
快速 |
? |
4月1日 |
|
|
山田線 |
1647D |
津軽石 |
発時刻 |
? |
|
視界不良 |
4月1日 |
|
650D |
釜石 |
終着後 |
○ |
1417着 |
釜石 |
4月1日 |
|
|
北リアス線 |
115D |
久慈 |
終着後 |
― |
1441着 |
復興列車に使用 |
4月5日 |
|
114D |
宮古 |
終着後 |
― |
1438着 |
復興列車に使用 |
4月1日 |
116D |
白井海岸 |
発時刻 |
○ |
|
普代 単行留置 |
4月5日 |
|
|
八戸線 |
437D |
久慈 |
終着後 |
○ |
1407着 |
久慈 3連留置 (国鉄色?) |
4月5日 |
441D |
鮫 |
終着後 |
― |
1435着 |
復旧 |
4月5日 |
|
442D |
八戸 |
終着直後 |
― |
うみねこ |
復旧 |
4月5日 |
この検証から、地震自体による列車被害は大きくないものの、やはり津波による被害が甚大となっています。車輌の被害は気仙沼線の松岩〜最知の2連
(キハ48×2?)、石巻線女川駅のキハ40、仙石線野蒜〜東名の205系4連、常磐線新地駅のE721系4連が津波により流失し、ほか常磐線で貨物列車が被災し
コキが流失しています (機関車だけは線路上に残っています)。ここには記していませんが、石巻の日本製紙専用線、八戸臨海鉄道、福島臨海鉄道なども被災
しています。なお、女川駅に隣接した温泉施設「ゆぽっぽ」に休憩所として使用されていたキハ40-519も被災し流失しています。
画像を見ると、地形によって被害が大きく違うことがわかります。女川の場合、トンネルを挟み津波被害が大きく異なっています。一方、三陸の
リアス式海岸の地域では、こんなところまでという場所にまで津波の痕跡が残っていたこともありました。報道では一体が全滅したかのような感じに
なっていますが、建物が残っている地域もあります (もちろん、建物自体が半壊など住める状態になっていないことは予想されますが)。
報道で報じられる場所はあくまでも「最も被害が大きい地域」であり、逆に被害が軽微な地域は報道されず支援も行き届かない場合があります。
グーグルアースを利用する場合は自分の見たい場所を見る事が出来るためこの点では問題はないのですが、前述のように大きな被害しかわからないという
点で注意が必要です。グーグルアースの場合は建物などの真上を衛星から撮影したものですので建物自体の損傷はわかりづらく、見た目上は無傷のように
見えます。ましてや津波などによる浸水や泥の被害などはほとんどわかりません。道路の泥の状態や周囲に積み上げられたガレキの山などで判断することも
できますが、時間の経過により消える痕跡なのでよく観察しないとわかりません。逆を言えば、画像の撮影日が進んでもガレキが山積みのままとなっている
場合は復興が進んでいないということです。画像の更新が今後頻繁に行われるかは不明ですが、被災地の復興が更新のたびに確認できることを祈っています。
そして、鉄道の不通区間がなくなり、被災地にも心置きなく観光で行けるようになる日が来ることを。
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きはゆに資料室長
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