今回のキハ10系の更新にあたり、車輌配置表を見返してみると各配置区に様々な車輌が配置されていたことに改めて気付きました。もちろん、それは車輌の
発達途上期であり、様々な用途別に車輌がいたのも事実ですが、特に気動車の場合はたいてい区別なく編成されていたという面白味でもあったのです。
これは動力伝達・車輌制御方式だけでなく、エンジンや台車の相性がよく、互換性が高かったことにも裏打ちされているのですが、逆に効率化が進んだ
現在においてはなかなか見られなくなったものでもあります。もちろん、現在でも他形式との混結列車というのは存在しますが、それは恒久的なものとは
言えません。他形式と混結しているとはいえ、それは大きく興味をそそるものとはなっていないのも事実です。それはなぜか、おそらく「ふぞろい」では
ないことにあるのでしょう。 総括運転が出来るようになったキハ10系以降では、基本的にどの車輌とも連結して列車を編成する事ができるようになりました。極端に言えばキハ82+キハ35 という編成も可能なのです。そのため急行や特急のように客車設備を指定しないのであれば、どのような車輌を組み込んだ編成も可能だったのです。 ロングシートのキハ35系を除けば客室設備は大して変わらず (実際は大きな違いはあるが) 極端に違う車輌でなければどの形式でも良かったのです。けれども 性能や定員では同じでも、外見ではかなりの差が出るのは言うまでもありません。ここに車体幅や高さ、ドア位置、窓形状が異なる「ふぞろい」の編成、いわゆる 凸凹編成が誕生するのです。ここで重要な役割を果たすのがキハ10系です。もはや言うまでもありませんが、この形式は車体幅も高さも他の形式よりも一回り 小さく、キハ20系以降の車輌と編成を組むと目立つ存在 (どちらの車輌が多いかで注目点は変わるが) となりました。窓も旧態然のバス窓ですし、その割りに ドアの位置は準急形や急行形と同じく車端寄りにあるなど、1輌組み込まれるだけで一気にふぞろい感が増す存在でした。実際はキハ35系、キハ20系、キハ45系 さらにキハ58系などとの組み合わせでそれはそれは面白い編成が随所で見られました。 けれどもキハ10系がなくなり、キハ20系も姿を消すようになると、次第に車体幅や高さは均一化されてゆきました。キハ40系がキハ58系と同じ寸法であるため キハ58+キハ40という編成もそれほど目を引くものにはならなくなりました。さらにJR後では配置区ごとに統一された車体カラーが設定されたことにより、 急行色+タラコ色という色のごちゃまぜ感もなくなってゆきました。逆に現在発生してきたのは鋼製車輌 (塗装車輌) とステンレス車輌の組み合わせです。 鋼製車輌とステンレス車輌の組み合わせは気動車だけでなく電車でも存在しますが、電車の場合は偶発的な感じがしますし、連結部でくっきりと分かれているため それほどのインパクトはありません。あくまでも面白いのは不統一感であり、統一されたものがつながったものではないのです。 JR後において、そういう意味で面白いのが転属したての車輌です。国鉄時代であれば基本的に通勤型の国電を除けば、よそから転属してきた車輌でもそのまま 使用しても何の違和感もないのです。しかし、JR後では各地にオリジナルの塗装パターンが存在したため、転属からしばらくは塗装が混在した状態となるのです。 もちろんそれはやがて解消されるものなのですが、その一時の「ふぞろい」感に大きな魅力を感じるのです。国鉄末期には103系の4色 (ウグイス・オレンジ・ カナリア・スカイブルー) を混ぜた特別列車が運転されたこともあり、こうした楽しみ方は今も昔もあるのです。 さて、気動車の凸凹編成も大変魅力的で現在ではなかなか見られないものなのですが、もっと見る事が出来なくなった「ふぞろい」の編成は何だかお分かりで しょうか?そうです。貨物列車です。現在ではコンテナが主流であり、それ以外の列車は物資別に分けられているため結構整った編成となっています。もちろん コンテナの積荷の有無による凸凹はありますが、かつての貨物列車はそんなものではなかったのです。 そもそも、現在の貨車の大部分はボギー車 (車輪を直接車体に固定せず、台車を介して接続する方法) ですが、かつては2軸車 (小型の貨車で車輪を車体につけた バネに直接接続する方法) の方が大勢を占めていました。当然2軸車とボギー車では車体長は大きく異なり、各貨車の種別内でも車体長や車体高がまちまちでした。 このような「ふぞろい」の貨車たちは形式ごとに分けて編成されることもなく (一部のコンテナなどを除く)、ごちゃまぜの編成を組んでいました。古い時代では 混合列車として普通の客車までついていたこともあり、それ以外の貨物列車でも配給客車 (オル・スルといった形式) など特殊な事業用客車がついていたことも ありました。客車がつかなくなってからも、依然として貨物列車は凸凹の状態が続いていました。けれどもこうした編成は効率が悪く、貨物扱いの縮小や廃止により 次第に姿を消してゆくようになりました。また、大きな車輌と小さな車輌が混ざることは競合脱線にもつながりかねないため、編成に使用される車輌が統一される ようになりました。 今は色とりどりのコンテナがあり、それを楽しむことは出来るかもしれませんが、残念ながらそうした観点の楽しみ方をされている方はあまりいらっしゃらない ようです。あとはコキ50000とコキ104系列との組み合わせなどですが、こちらも車体下部という地味な位置にあるため盛り上がりに欠けます。タキにおいても 数種類の塗装は存在しますが、あくまでも会社ごとの違いであり混在するとしても従来からの黒貨車のみであまり気を引くものではありません。化学薬品や セメントにおいても物資別での区別がされていたり、形式が統一されていたりするため、よく観察しなければ統一された列車という印象しかしません。 極まれに配給列車などでタキ+コキ+チキといった列車が目撃される事がありますが、現在ではこうした列車でしか「ふぞろい」感を味わう事が出来ません。 今まで「ふぞろい」「ごちゃまぜ」「凸凹」の良さを語ってきましたが、もちろん統一された美しさを重視される方も多いことはわかっています。 けれどもこうした統一美は誰もが享受できる美であるのに対し、ふぞろいの美というのは理解されないものです。だからゆえ、そうしたものは淘汰され、 姿を消してきたのですが、こうした美しくないものには美しいものにはない面白さがあるのです。美しいものは美しい、けれども美しくないものにだって 楽しみ方はある。美しくないことを美しいと思えば、それは楽しみ方の一つになる。そうしたへそ曲がりな楽しみ方もいいのではないのでしょうか? |
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きはゆに資料室長 |