タラコ大量復活?

 決して食品偽装や、ホラー系の話ではございません。鉄道のお話です。

 高速道路1000円が決定的、とは断言できませんが、鉄道会社の収益は悪くなる一方のようでして、JR西日本ではこのような 経費削減策を打ち出しました。それは......車輌塗装の単色化!! 要は国鉄型車輌 (鋼製車輌≒国鉄形車輌とします) の 塗装を通勤型国電のように単色の塗装にします、というもの。通勤型はともかく、115系や113系も1色塗りと言うのは、国鉄時代にも なかったものです。最初は広島支社だけのものと思っていたのですが、その後の発表で全ての国鉄型車輌が対象のようで、一応 地域ごとに色を分けるそうです。一覧にすると、このようになります。

支社名 対象路線 色のコンセプト
金沢支社 青色 北陸本線 現行車輌の基調色
金沢支社 赤色 七尾線 輪島塗
京都支社 緑色 湖西線・草津線など 抹茶、木の葉など「和」
和歌山支社 青緑 紀勢本線・和歌山線 太平洋のさわやかさ、輝き
岡山・広島支社 黄色 中国地域の電化路線 瀬戸内海に反射する陽光
気動車 朱色 非電化区間全域 国鉄色の復活

 気動車に関してはJR西日本のキハ40・47と48であれば全て同じ色になり、それも朱色5号のタラコ色 (首都圏色) となるのです。 これは今までのリバイバル塗装とは規模が違います。それ以前に、米子支社ではず〜っと国鉄色を守ってきたのですから、ほかのJRに 比べるとそれほど驚くものではないかもしれません。もちろん、それぞれの色が純粋に国鉄時代の色と同じものであるとは限りません。 広島支社の「黄色」で言えば、パッと思い浮かぶのはカナリアイエローですが、発表では「濃黄色」とされています。カナリアイエローが 濃い黄色と言えるかはビミョーなところですが、できるならばいわゆる「国電色」に則したものであって欲しいと願います。
 では、それぞれどのような色が該当するかを考えてみると、青は青20号、いわゆるブルトレ色。赤はレッドトレインの赤2号。青緑は 103系1000番台でおなじみのエメラルドグリーン (青緑1号)。黄色はカナリアイエローの黄5号 (正式な色名はマリーゴールドイエローだそうです)。 そして緑ですが、普通に考えれば湘南色に使われている緑2号だと思うのですが、これの単色塗りはかつてなく、これ一色だとかなり鬱陶しい 感じに思えます。「和」テイストを出す割には、使用線区は京都よりも滋賀のほうが多いですし (山陰本線は221系223系化が完了)、抹茶の色が こんなに濃いか?とも言えます。とは言え、ウグイス色 (黄緑6号) も妙な感じがしますし...妥協点として、東北新幹線の緑14号(モスグリーン) は どうかと思うのですが、JR西日本にとっては関係のない色ですから...。
 なお、本社管轄域では塗装変更がアナウンスされていませんので、播但線、加古川線の103系、日根野の105系(和歌山線・桜井線で使用) の塗装は どうなるのか...。別に新たな色の登場となるのか、現行維持となるのか、まだわかりません。そういえば奈良配置の103系にある白線は どうなるんでしょうかね?
 ともかく、この単色塗装については、早速賛否両論が上がっているようです。1色塗りでつまらない。国鉄色の復活だ。独自性がなくなる。 経費節減のためにはやむをえない。まぁいろいろありますが、全ての車輌の変更が終わるのは2018年だそうですから、それまでに経営が改善すれば 単色塗りもなくなるかもしれません。逆に国鉄型車輌がなくなってゆくことも考えられます。8年後であれば、国鉄型車輌の車齢は35年を過ぎますので、 塗り替えるのは半数程度にとどまるかもしれません。
 この塗り替えの効果は1輌あたり最大20万円、年間で2000万円程度のようですが、これは単純な塗り替え費用の事を指すものと思われ、転属による 塗り替えは含まれていないと思われます。特に気動車であれば同じ色となるのですから、今までは転属先の色に塗り替えていたものがその必要が なくなったのですから費用はまるまる浮くわけです。また、収支が悪い地域ほど同じ色の範囲が広いため、その管区内での転属は電車であっても 塗り替えの必要がありません。岡山・広島・下関の3区では同じ色となる事が予想されますから、これまで以上に転属が活発になる、あるいは配置区の 統合が行われるかもしれません。

 いずれにせよ、これは単なるファンサービスではなく、経費削減の一環である事が重要です。国鉄色の復活と喜んでばかりはいられないのです。 そこまでして経費を削減しなければいけないところまで追い込まれているのです。半国営のような航空会社が経営危機になるこのご時世。鉄道会社とて 例外ではないのです。ふと気がつけば、中国地方の路線図がスカスカになっているかもしれません。ローカル線ではダイヤ改正のたびに列車の削減、 速度の低下、編成の減少など、どうしようもないところまで来ています。列車本数の減少・サービスの低下→さらなる客離れ、という悪循環は 目に見えていますが、線路がある以上走らせなければならない現実もあります。本音を言えばローカル線なんてさっさと廃止したいといったところ なんでしょうが、そういうときだけ「公共交通機関なんだから」という足かせをつけられます。今回の塗装変更が、国鉄の末期と重ならないことを 祈るばかりです...。

きはゆに資料室長