ヤボ用にて、シルバーウィークが終わった矢先に東京へ行くことになりました。これまでならば「ムーンライトながら」に揺られて...となるのですが、
もう定期列車ではないので運転されておらず (しかもシルバーウィーク期間内は「えちご」「信州」は運転されているにもかかわらず、「ながら」はナシ!)
昼行で行くしかありません。けれどもそれではどうしても一泊せねばならず、それを回避するには夜行バスを使うしかありません。どうせ夜行バスを使うのならば、
往復を乗車してみて、夜行バスがどのようなものかを体験しよう!ということになりました。 夜行バス、と言っても様々ありますが、初心者と言うことでJRバスを利用することにしました。なお、他の会社の場合は「路線バス」ではなく「観光ツアー扱い」 というものもあるようです。各社でも同様ですが、同じ路線でもいくつかのランクがあり、今回乗車したJRバスでは下から2番目の安さのものに乗車しました。 とは言え、一番安いものが通常のハイデッカー車である以外は2階建て車輌でして、私が乗車したものよりも上のランクだと2+1シートとなったようです。 区間は大阪〜東京ですが中央道経由のものもあり、バスならではの小回りのよさを武器にしています。また、東京〜大阪というドル箱路線であるため、夜行とは言え 同じランクでも複数便が出ている場合があり、まるで全盛期の臨時夜行列車状態。JRバスだけでこうなのですから、他社のバスが同じターミナルに集まったら それはそれは大変なことになるでしょう。便数が多いのですから利用者の数も当然多く、バスターミナルは結構賑やかです。165系時代の大垣夜行のような感じ でしょうか。乗客は老若男女と様々で、バックパッカーと思われる外国人もちらほらと見られました。特に夜行列車が臨時化されてからは外国人の姿が列車内から 見られなくなったと思っていたのですが、やはりバスに流れていたようです。外国ではバスのほうがなじみがあるからでしょうか? では、そのバスの車内について説明いたします。まず最初に、バスですから狭い!特に天井は2階建てということもあってかなり低く感じます。鉄道の感覚は もはや通用しません。ちょっとした荷物でもかなり邪魔になります。大きな荷物はトランクルームに預けるのですが、このスペースすらかなり狭めです (通常の ハイデッカーと比べて)。2階建てですが、1階はほぼ運転席と機器、そしてトイレと階段が占めており、座席は僅かとなっています。したがってほとんどの乗客は 階段を上って2階へ...となります。格安便なので座席は鉄道と同じく2+2ですが、若干シートピッチは狭いと思われます。また、座席1席の幅も狭く、 肘掛は片手分のみで (窓側席の窓側はなし) 最低でも急行形車輌であった夜行列車とは大きな差があります。ただし、リクライニングの角度は格安の割に結構深く、 少なくとも波動輸送兼用である「ムーンライトえちご」の485系よりはいいのですが、ムーンライト専用車輌であった165系やミッドナイトのキハ27-500には 及びません。バスの座席は回転機構が不要ですので、座席の下には結構スペースがあり足を伸ばす事が出来ることが特徴的でした。各座席上には読書灯とエアコン 吹き出し口があり、各々使用する事が出来ます。空調管理が各自で出来るのは鉄道にはないもので、極端に寒いとか暑い車内というのはありません。 いよいよ出発となるのですが、夜行バスであるがための残念な部分があります。まずは高速道路走行中はシートベルトを締めること。もちろん睡眠中もなのですが、 実際にシートベルトをしている人はあまり多くなかったように思われます。次が全てのカーテンが閉められていることです。鉄道の場合であれば開けているのが 原則ですが、夜行バスの場合は乗車したときから閉められていました。2階席ですので前のガラスにもカーテンがされており、周りの状況が全く見えない状況で 揺られるという何とも気持ちの悪いものになりました。しかも一般道を走行しているときは普通に右折・左折・停止をするのですから、それはそれは大変です。 車に弱い方ならば、この時点で酔われるかもしれません。けれども、このカーテン閉め切りがされている理由はすぐにわかりました。高速に入ると照明が消されて 常夜灯のみとなり、車内は眠るのに最適な環境となりました。これは鉄道における「減光」よりも格段に上です (ミッドナイトの場合は同様の状態でしたが)。 そうなると外の光はかなり明るく見えるうえに、高速道路ではライトが結構短い間隔で設置されているため、かなり眩しく感じます。そのためにはやむを得ないの ですが、「ただひたすら寝る」という感じには旅情はもはや存在しません。最後は鉄道とは違う「揺れ」です。鉄道の場合は区間などにもよりますが縦ゆれ、横揺れが 適度に混ざり合い、駅付近でもなければそれほど大きいものはありません。しかし道路を走行する場合は先ほど述べたような右左折のほかにも路面状態によるものや 高架道路の継ぎ目による揺れがしばしば発生します。右左折以外は横揺れがほとんどないので、まさに船に乗っているような縦揺れの連続となります。外の様子が わかればまだいいのかもしれませんが、外が見えない状態ですので気を紛らわせる事ができません。重ねて申し上げますが、車酔いをしやすいという方は夜行バスは 避けられたほうがいいです。 客室設備などはランクによって異なるので、もっと快適なものもあるのかもしれませんが、ランクに関係なく一番大事なのはどれだけ時間通りに運転されるか、 ということです。私が乗車したのは大阪発が東京到着予定時刻金曜7時30分、東京発が大阪予定到着時刻土曜7時00分の便だったのですが、行きの便では首都高の 事故のため50分おくれ。このようなものは予想はしていましたが、いきなり50分の遅れに遭遇するとは思いませんでした。しかし帰りの大阪行きにはもっと驚かされ ました。なんと30分の早着になったのです。鉄道の世界では遅れはあるとしても、早着というのは基本的にありません。それも30分も。そりゃ、旅行の予定に影響を 及ぼさないものではありますが、夜行バスの場合到着は早朝ですから、場合によっては時間を潰すにも潰しようがないこともあります。なお、バスの約款には バスの遅れによる料金の払い戻しは一切ない (JRバスの場合) とのことです。よほどの事がない限り大幅な遅れがない鉄道と、到着時刻はあくまでも「予定」で しかないバスの大きな差はここにあると思います。もし、綿密なスケジュールを立てられるのであれば鉄道利用のほうが良さそうです。しかも、休日高速1000円の 影響で、高速バスはかなりの遅れに悩まされているようです。 今回夜行バスに乗車して、まだ夜間に移動する人の需要はある事がわかりました。東京〜大阪であれば8輌編成ぐらいの需要は軽くあると思われます。しかし、 鉄道とバスの差は料金の問題だけでなく、車輌運用の根本的な違いにあるのではないでしょうか。バスの場合は数台連ねて同じ時間に発車するのであれば効率は 悪くなりますが、時間差を開けて出発地や終着地、停車地を微妙に変えることによって細かな需要に対応できる利点があります。一方鉄道の場合はある駅から同じ 経路である駅まで長い編成で向かう場合は効率がいいのですが、短い編成であったり、目的地などが複数ある場合は様々な弊害が発生します。バスであれば運転手が 2人いればどのような場合でも十分ですが、鉄道の場合は運転士と車掌、分割・併合をするのであれば地上職員が必要となり、またその編成分の乗務員が必要と なります。これは細かなサービスに対応すればするほど、その非効率さは大きくなります。多種多様のニーズに応えるにはその単位を小さくするしかなく、そうなれば 鉄道は太刀打ち出来ません。ただ、東京〜大阪のような巨大需要が見込める場合は、その可能性はゼロではないと思います。全席2+2のフルクリライニング座席車 の長大編成で、区間は姫路〜大阪〜東京〜浦安であれば需要の高い都市を通過しますし、客車列車であれば新造費用もそれほど高くなりません。電車であっても、 細かく分割できる編成にしておけば小口の団体にも使用できますのでヒルネをしている状況は多少回避できると思います。単純に利用者が減ったから、車輌が 古くなったから、というだけで列車を廃止するのではなく、何かしらの努力というものを感じさせてもらいたいものです。まだまだ「夜」の需要はあるのですから。 |
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きはゆに資料室長 |