エコ政策をするなら

 5月に始まったエコポイント制度。一定の省エネ率を達成している特定の家電製品 (冷蔵庫・エアコン・地デジ対応テレビなど) に対して政府拠出のポイントを付与するというものですが、付与が始まった現在でもまだその内容がよくわかっていません。 このポイントは家電量販店のそれみたいにその店ならば何でも使える、というものでもなさそうですし、引き換え対象商品の 内容によっては無意味なポイントにもなりかねません。そもそもこのポイントは省エネ率を達成していればどれだけ 省エネ率が高かろうと低かろうと同じで、逆に小型のものよりも大型の物のほうがポイントは高くなります。テレビを例にすると 14型のブラウン管テレビを17型の液晶テレビに替えた場合、消費電力は少なくなりエコとなりますが、より大形のものにすると 消費電力が大きくなり逆効果となります。本来のエコならば「より消費電力が少ないもの」ほど優遇されるべきなのですが、 このエコポイントの制度ではある一定の率さえ達していれば、消費電力が大きいものの方が高いポイントがつくことになります。 結局のところ、政府のエコ政策というのは本当にエコを目指したものではなく、企業寄りの景気対策でしかないということなのです。
 これは交通行政についても同様の事が言えます。そう、高速道路1000円ポッキリ政策です。
 土日・祝日にATC装備の普通乗用車限定と制約は多いのですが、その反響は大きく各地でATC車載機が売り切れるなど 社会現象にもなりました。さらにゴールデンウィークにもこれが適用されるとなるや、一気にマイカーによる行楽が増え、各地で 渋滞が倍増したという報道もあります。このような状況となると、当然他の公共交通機関の利用者は減少し、JRのゴールデン ウィーク利用者は7%減となり、瀬戸内などのフェリーは特に大きな打撃を受けました。当然、マイカーの利用が増えれば 排出される二酸化炭素の量も増え、その量は削減目標分に等しいとも言われています。このような政策のため、海外に対しては エコ外交をカンバンにしている首相に対して、海外からも疑問の目が向けられ始めています。
 本来エコを主導とするのであれば公共交通機関に対して優遇政策をすべきですが、現在のエコ政策は消費優先・促進優遇政策 であって、経済的に効果の薄い公共交通機関には見向きもされない状態です。この裏にはほとんど利用がない地方高速道路や、 不況により業績が低迷している自動車業界の存在が見過ごせません。また、選挙を見越した国民への人気取りであることは 言うまでもありません。本来エコをするならば無駄をなくし、消費を抑制すればいいのですが、そのようなことは経済界が 黙っていません。もし公共交通機関の利用を促進し、マイカーなどの販売・利用を抑制すればエコは達成可能なものになりますが、 乗用車を主として生産している企業やそれに付帯する業種は大きな損出となります。国は迷わず経済効果をとったことになるの ですが、少なくとも「エコ」を掲げて政策を行うのであれば見え透いた偽策はどうなのでしょうか。その内容も良く知らずに 「エコ」というだけに飛びつく国民も問題なのですが...。
 地方ではマイカー以外の移動手段がない、という現実もありますが、それはマイカーの増殖によって公共交通機関が淘汰された 場合も多く、公共交通機関を復活する実験を行うという施策もあります。現在公共交通機関があるのであれば、割引やポイント などのほか、パークアンドライドなど、より利用しやすく、より利用したいと思わせる施策が可能です。特定企業や非利用者に 対する不公平が生じるという説も発生しますが、これは高速道路のそれも同様です。逆に公共交通機関でも特に鉄道に対しては、 国鉄の反動からか道路などに対して大規模な施策がなされてないように思えます (政治的な思惑の濃い整備新幹線を除く)。 公共交通機関に対する政策が全く経済的に無意味なものではありません。施策を行えば当然何らかの経済的効果は発生するので あり、それを行わない (選択しない) のは政治の責任であり、それをさせない財界中心部の影響によるものです。「ウチが打撃を 被れば、日本経済は破綻しますよ」とばかりに優遇政策を推し進め続ければ、どこかの国の某メーカーのようなことになりかね ません。エコ政策を実施するのであれば、こうした動きとも決別し、本気でエコに取り組まなければ環境にも、経済的にも、 国際的にも立ち遅れることとなるでしょう。
きはゆに資料室長