優先座席

 少し前の話ですが、新聞の投書欄がある話題でにぎわっていました。それは「優先座席」を含めた「座席の譲り合い」に ついてです。
 そもそもの発端は「部活帰りの学生が大きいかばんを床に置き、通路や出入り口付近を占拠している」という投書と、 「××高校の野球部員がいっせいに席を譲ってくれた」という投書の両方が掲載されたことでした。それ以来、断続的に 座席に関する投書が顔を出すようになり、その中には「優先座席」に関するものもありました。
 これだけの話題になる「優先座席」ですが、その利用状況を改めて思い返すとどうでしょうか?日々の通勤・通学での 光景も思い返してお考え下さい。

 そもそも「優先座席」のルーツは「シルバーシート」であることは言うまでもないと思います。シルバーシート、つまり お年寄りのための席だったのですが、私鉄(特に関西?)においてはその範囲を体の不自由な方にまで広げた「優先座席」が 次第に主流となり、現在ではほぼ「優先座席」に統一された感があります。席を「譲られる」対象となる人もお年寄りと 体の不自由な方 (現在では怪我などによる一時的なものも含めて) のほか、妊娠されている方と小さな子供を連れた方も 含まれています。そして大部分の場合、「優先座席付近では携帯電話の電源をお切り下さい」というルールになっています。 これは座られる方のことを考えれば、当然のことであると思います。
 しかしっ!女性専用車輌とは異なり、優先座席については何の躊躇もなく座り続ける人が多すぎるとは思いませんか? 中には優先座席に座り、携帯電話で話し始めるという論外な人間 (もちろん対象外の) までいる始末。こうなれば「優先座席」は もはや有名無実でしかありません。そもそも私は優先座席には座りません。一度、知らずに座ってしまった事がありましたが、 その時は重い気持ちになってしまいました。「そういう人が来るまでなら座っててもいいんじゃないか」という人もいますが (鉄道会社も「専用」ではなく「優先」としているように、あくまでも「譲る」ことを前提として着席を許可している) 、 私は最初から席を空けて、いつでも座る事が出来るようにしておくべきだと考えているのです。もし座ったあと、さっさと譲る ことが出来る人であっても、ラッシュ時など状況によってはそれが出来ないこともあります。
 とあるサイトでは「優先席に座っていて、自然におばあさんに席を譲れた自分は上出来!」などといっている人がいましたが、 優先席に座っている段階で威張ることではありません。普通の席ならともかく、優先席に座っているのならば席を譲るのが 当然です。ある意味、この程度の感覚だからこそ「優先座席」というものを「設置」しなければならないのかもしれません。 欧米ではこうした「優先座席」というものはないと聞きます。それはこうした席を設置しなくても、人々の間に席を譲る習慣が 自然と身についているからです。少し前まで阪急電車では「優先座席」という特定の座席を廃止し、全車が優先席だという風に していましたが、結局この習慣は定着しなかったということで、現在は優先座席が復活しています。
 さきほどの新聞の投書欄に戻ると、「疲れていても席を譲らなくてはいけないのか」という投書もありました。優先席では 前述の4パターンのみが譲る対象とされており、「疲れている人」はもちろんその中には入っていません。もし疲れた人が 対象に入れば、帰宅ラッシュはどうなるでしょうか?「通勤車輌」の座席数自体が少ないこと自体にも問題があるのかも しれませんが、自分よりも席を必要としている人のことを考えることも必要なのではないでしょうか。もしそれを考える余裕が ないのならば、最初から優先座席には座らない、いや、座れないと考えればいいのです。

 一番いいのは、疲れている表情を見て、誰かが自然に席を替わってくれるような社会になることなのですが...。
きはゆに資料室長