ミス

 履歴調査をする上で、困った問題に直面する事がしばしばあります。それが誤植です。一口に「誤植」と言っても、その内容は 様々でして、一目見てわかるものもあれば別の履歴とつき合わせてわかるもの、そして未だにわかっていないもの...。 発見した際は「おいおい」&「えらいこっちゃ」なんですが、その間違え方に感心することもあります。
 最も多いのは数字の「3」「6」「8」「9」の間違い。活字でも間違えそうになるのですから、手書きの原稿だったらなおさら です。出版されたあとでも印刷の状態によっては迷うこともあります。次に多いのが「ニ」と「ユ」です。昭和40年代など、 まだそういう知識を持っていない印刷所で印刷をしていた(と思われる)頃では、「オハニ」が「オハユ」となっていたりという こともあったのですが、傑作だったのが「キハユニ26」が「キハ2226」となっていたのです。「ユ」も「ニ」も「2」になってしまい、 「キハ22-26」になってしまったのです。実際はこのあとに車番がついているのですぐ間違いに気がつきましたが、何とも壮絶な 誤植です。ほか、昔の印刷は活字でしたので、字が横に向いていたり、字の順序が入れ替わっていたり(キハ→ハキ)というならでは の間違いもありました。逆に最近ではパソコンの変換ミスと思われる誤植が出来ています。
 このような「誤植」はまだある程度推測が出来るのですが、原稿の段階でのミスというのが一番厄介です。正しいどうかはわかりませんが、 車輌の動きについては国鉄の現場→国鉄本社(広報?)→各出版社の担当という流れで伝わってゆきます。この書類などの編集過程で 内容が書き換わったり、判読しにくい字になったりということも発生します。このテの誤りは出版社の側では気がつきにくく、 当資料室のように継続的に調査をしてはじめて発見できます。前後に関連性のない転属がいきなり発生する。何度も廃車が繰り返される。 少し前に転属した車輌が、同じ場所から別の場所に転属した。こういうものが出てくると、もはや推理の世界です。車番を一字 変えてみる。似たような地名ではないか。あとは経験的に...<(-_-;)?。こんな感じです。さらに悪いことに、こうした誤りは なかなか訂正が出ないのです。たとえ訂正が出たとしても、その訂正号を持っていなければ意味がないのであり、古い雑誌から 調べる身としては結構苦労します。これは「車両配置表」などでも同様で、国鉄時代に発売されていたものでは11〜12月ごろに 正誤表がよく掲載されていました。現在でも高値で取引されている車両配置表ですが、この正誤を知らなければ驚く事が結構 あると思います(推察できるものもありますが)。鉄道ピクトリアルのアーカイブスとして復刻出版されているものの中でも、 正誤表がないものもあり、正誤表がなくても間違いはたんまりと御座いますので、資料として利用される方はご注意下さい。
 このように他人のミスについて書いておりますが、もちろん室長自身によるミスも御座います。雑誌に掲載されている車番を 見間違えたり、タイプミスをしたり、別のところに入力したり...。ベースのデータはExcelで作成していますので、これを htmlに変換する過程でのミスもあります(結構手がかかりますので)。
 こんな経験をしてきたある日、テレビで社会保険庁の名寄せ作業のドキュメントを見ました。他人事のように思えませんでした。 別に社会保険庁の人間ではありませんし、社会保険庁の肩を持つつもりはさらさらありませんが、その「ミス」は共通するものが ありました。人の手が多くかかると、やっぱりミスが発生する確率は増えてしまう...。思い込みなどがあればなおさら...って。
きはゆに資料室長