キハ20のいる鉄道

 T社からキハ20系が発売され、当資料室ではキハ20系祭り状態が続いておりますが、今回も引き続きキハ20系の話題です。 キハ20系はキハ10系と大きく異なっている点の中に、両運転台の形式の方が車輌数が多いことがあります。両運転台であれば 運転台の向きなど運用上のやり取りが簡単になり、1輌の運転も可能なため (片運転台で単行運転を強行した事例もありますが) 特にローカル線での運転には重宝しました。
 やがて車輌が老朽化し、新型車輌と置き換えられるようになると何輌かは地方鉄道に譲渡されるようになりました。キハ10系も 20系も譲渡されていますが、両運転台車が多いキハ20系の方が多く譲渡されています。もちろん、絶対数の少なさから車輌状態 により断念したこともあったかもしれませんが、客室設備や車体設計などの観点から10系気動車を見送ったとも考えられます。 まとめるとキハ10系は25輌 (キハ10-12 キハ11-5 キハ16-4 キハ17-4 機器流用目的を除く) に対し、キハ20系では50輌 (キハ20-29 キハ22-21 書類上の貸出車を含み、機器流用目的を除く) と倍になっています。また、酷寒地用のキハ22がある ことや両運転台の形式が譲渡されていないのも特徴です。

 さて、現在キハ20系が生き残っているのは津軽鉄道 (キハ22-2輌) 、茨城交通 (キハ20-1輌 ほかにも私鉄の類似タイプあり) 水島臨海鉄道 (キハ20-4輌?) 島原鉄道 (7輌) となっています。茨城交通を除き、ほかの鉄道では朝夕のラッシュ時や波動用と して保有しており、運転される時間帯はほぼ決まっています。これは新型車輌を使用するほうがサービスの向上になることや、 老朽車輌を長く使用するため、そしてワンマン設備で設置しにくい客室構造であるためです。特にキハ20では客室扉の位置の関係 でワンマン設備を設置するとどうしてもある程度の座席を撤去しなくてはならず、それだけ無駄なスペースを作らねばなりません。 したがって2輌以上のツーマン運転時にしか使用しなくなり、本数も少なく、運転区間も限定されるのです。 なお、茨城交通の場合は昼間でも運用によっては新型気動車と顔を並べる (併結ではありません) こともありますが、これは ワンマン改造がされていて同線では新型以外で冷房車はこのキハ20のみとなっているためです。

 国鉄譲渡のキハ20系に限らなければ最も乗車の確率が高いのは茨城交通です。朝夕のラッシュ時には私鉄譲渡車を含めて2輌 以上で運転されるので、DMH17Cエンジンの旅を楽しむ事は比較的簡単に出来ます。日中でも特に夏場ではキハ20に出会うことは 可能であると思われます。駅間距離も比較的長く、直結運転も行い60km/h程度は出して運転しているのもうれしいところです。 なお、鹿島臨海鉄道から譲渡されたキハ20はほとんど使用不能の状態となっていて、キハ201 (元421) は更衣室に、キハ203 (元429) はエンジンをはずされています。存在を確認したキハ202 (元274) も車体の痛み具合から見て使用はされていないようです。
 次に水島臨海鉄道ですが、こちらは運用数も少なく、ダイヤもはっきりとしません。また、夕方の列車は日没間際であり、 乗車はできても撮影は少し苦しい時間帯となります。駅間距離は比較的短く、直結運転も倉敷市〜球場前程度しか行われません。 貨物主体で全線の半分以上が高架となっているため乗り心地はいいのですが、その分魅力は半減してしまいます。運転列車は 駅時刻表の非ワンマン列車から推察できますが、新型車の2連の場合もあり、断定は出来ません。倉敷市駅の時刻表を見ると、 非ワンマン列車は7:21 7:59 8:19 8:40 9:29 9:47 16:33 17:36 18:24 18:43 19:50 (平日のみ・平成14年3月23日 改正分) となっています。
 現保有各社のうち、キハ20系の運用がダイヤ上ではっきりとわかるのは島原鉄道だけです。公式ページで掲載されている時刻表 でもキハ20が使用されている列車は強調されていますし、トロッコ列車の一方もキハ20となっています。列車本数自体は少ない ほうですが、距離が長いため満喫して乗車できますし、さまざまな場所で撮影が出来ます。また、特定の日は運転区間を延長して 加津佐までのいわゆる南線まで顔を出しますが、基本的には諫早〜南島原の運転となっています。駅間距離も長く、現保有社の 中では最も速度を出して運転されるため、国鉄時代を髣髴とさせられます。ただし線路が37kgレールであるため動揺はそれなりに あり、交通量が多いわりに4種踏切が多いので結構にぎやかな(?)運転となります。島原鉄道のキハ20は原形を保っていることも 特徴となっています。他の2社ではトイレは撤去されていますが、島鉄では運転距離が長いためトイレは残っており、流し管も そのままついています。トイレはあるのに冷房化され、その発電エンジンが水タンクの部分にあるのが不思議なのですが...。 塗装も国鉄一般色・国鉄首都圏色・島鉄旧色・島鉄標準色・新型車輌色とさまざまあり、かなり楽しめます。 なお、島原鉄道は来年2008年3月末日で島原外港〜加津佐が廃止となるため、キハ20の運転や保有が大きく変わる可能性もあり ますので、ご乗車などはお早めにされることをおすすめいたします。

 「キハ20系」という範疇にはキハ52も含まれるので、JRにもキハ20系は存在することになりますが、こちらはいよいよ終焉の 時が近づいているように思われます (そもそも東日本車はエンジンなどの違いがあるし...)。車体老朽化だけでなく、地方 私鉄の経営悪化による事情で廃車 (車輌余剰) となる可能性もあり、その存在は風前の灯と言っても過言ではありません。40歳を 越えた車輌がいまだに高速で走行しているのも感慨深いものがありますし、このような状態で走行できるように整備をされている 各社の検修員の皆様にも頭が下がります。各社とも冷房化がされているほか、運転台は開放式のままで運転助士席後ろのいわゆる 「かぶりつき席」も健在 (島原鉄道はトイレがあるため片方のみ) というのもうれしいところです。各地からだいたい1泊以内の 場所にキハ20はいますので、乗車にチャレンジされてはいかがでしょうか?最後に現在存在している(はず)のキハ20系譲渡車を 紹介しておきます。
津軽鉄道 (現在保留状態)
キハ22027
(キハ22-156)
キハ22029
(キハ22-228)
茨城交通 (私鉄発注譲渡車は省略)
キハ202
(キハ20-274)
キハ204
(キハ20-243)
キハ205
(キハ20-522)
水島臨海鉄道
キハ203
(キハ20-338)
キハ204
(キハ20-340)
キハ205
(キハ20-321)
キハ208
(キハ20-318)
島原鉄道 (自社発注車キハ2003もあり)
キハ2006
(キハ20-440)
キハ2008
(キハ20-295)
キハ2011
(キハ20-431)
キハ2013
(キハ20-437)
キハ2016
(キハ20-433)
キハ2018
(キハ20-413)
キハ2019
(キハ20-323)





きはゆに室長