鉄キャラ大もて?!

 最近の朝日新聞(夕刊)の1面に 「テツ」キャラ 大もて という見出しが出ました。さて、この見出しだけを見て素直に納得できる方は いらっしゃるでしょうか?
 記事の内容はドラマやマンガなどで鉄道好きのキャラクターが登場するなど注目を浴びている、ということだが、現実の 鉄道好きにとってはたして状況はこの記事通りに好転して来ているのでしょうか。確かに近年芸能人が鉄道好きを公言したり、 実際に趣味が高じて (災いして?!) 番組になったりするなど公の場において「鉄道」が登場することは多くなりました。また、 「鉄道オタク」を自称する女性アイドルまで登場するなど、女性にも鉄道趣味人がわずかながら増えていることも事実と言えます。 ただし、これはあくまでも過去の状況との比較であり、現実的に立場が向上したと思う方はあまりいらっしゃらないと思います。 たとえば、「スポーツ観戦をするので会社を休む」というのと「ある列車や路線がなくなるので会社を休む」というのでは、 どちらが理解を得られるでしょうか?「いずれにせよ、くだらん理由で欠勤するのはけしからん」というお答えはなしとして、 おおかたは前者の方が理解は得られやすいと思われます。単純にその趣味の人口が多いということもありますが、新聞記事の 言葉を引用すれば「オタク趣味の代表格」のようなことで休むな、ということが否定される理由ではないでしょうか。
 では、なぜ今脚光を浴びているのでしょうか。記事では鉄道の旅の魅力が伝わったこと、「オタク」に対する風当たりが 弱まったこと、団塊の世代が鉄道趣味に目覚めたことなどをあげていますが、私個人としてはこれらの要素に「単なる一過性の ブーム」であることを付け加えたいと思います。ドラマ、アニメ、マンガなど絶えず新しいネタを探さなければならない現場では とにかく真新しく写るもので、独特の世界観を持ち、かつある程度大衆におもしろおかしく受け入れられるものを見つけなければ なりません。 それが近年たまたま鉄道にスポットが当たっただけであり、今後の視聴率や売れ行きしだいではすぐにこのブームは去ってゆく はずです。また、ドラマ、マンガはともに「鉄道オタク」が主役であり、純粋に「鉄道」に主点を置いたものではありません。 「鉄道オタクと一般人との温度差」や「鉄道オタクの世界で恋愛をしてゆく」といった、あくまでも「背景の設定」として 取り上げられているに過ぎないのです。
 そもそもこの朝日新聞の記事に登場する鉄道好きの呼称をあげてみますと、「鉄道マニア」が10回 ※1、「鉄道好き」が2回※1、 「ファン」が1回で「オタク」に関しては「オタク趣味」という概念で使用されるにとどまっています。少なくとも、この記事の 中では鉄道好きの地位向上は図られておらず、単にそのキャラを面白がり、なぜそんなキャラがウケるのかと疑問に感じている ように読み取れます。そもそも「マニア」とは「熱中」など熱によって一時的にうなされるという感じの言葉であり、一方 「ファン」※2は「狂信」などある信念から没頭する意味合いとなっています。昔から メディアで「鉄道好き」を取り上げられる場合は、半ば否定的な意味で「鉄道マニア」という言葉を使っており、今回も表題とは 裏腹にその流れを受け継いだものと言えます。「鉄道ファン」という語が使われないのは同名の雑誌があり、これが商標登録 されているためという見方もありますが、だからと言って安直に「鉄道マニア」で統一するのはいかがなものでしょう。字数の 問題であれば「鉄道趣味人」や「鉄道愛好家」ならば同数ですし、「鉄道好き」ならば1字減らすことができます。自嘲する意味で 「マニア」や「マニアック」を使う分にはいいのですが、代名詞として使用され続けたうえ、表題とは異なる意味合いとなるのは 甚だ疑問です。

 結局のところ、朝日新聞は見出しをつけ間違えたということなのでしょうか。正しい表題は
今、なぜか「テツ」キャラがウケている

とでもしたらいかかでしょうか!



※1 似たような表現も含めています  ※2 fanはfanaticからの派生語


きはゆに室長