非電化ローカル私鉄の将来

 みなさんもご存知のように、3月31日で鹿島鉄道とくりはら田園鉄道が廃止となりました。これによりまた、非電化私鉄が 数を減らしました。旅客営業を行う非電化私鉄は観光目的の黒部峡谷鉄道と嵯峨野観光鉄道を除いて6社となりました。これには 第3セクターの非電化鉄道は含んでいませんが、純然たる私鉄として経営しているということであえて除いています。
 残る6社とは津軽鉄道、茨城交通、関東鉄道、小湊鉄道、紀州鉄道、島原鉄道のことですが、いずれも鉄道事業は苦境に 立っています。すでに島原鉄道では来年4月1日で島原外港〜加津佐を廃止することが決定しており、茨城交通についても廃止が 噂されています。常磐線と同様の理由で電化に踏み切る事の難しい関東鉄道は別として、いずれの鉄道もモータリゼーション、 少子化、過疎といった従来から鉄道の抱き続ける問題の影響を大いに受けています。いずれの私鉄も多角経営で何とか乗り切って いますが、近年の原油価格の上昇や車輌の老朽化、そして速度照査ATSなど新たな設備は追い討ちにしか過ぎません。この ような状況が続けば、いずれ純然たる非電化私鉄は消滅してしまうかもしれません。
 これは公費が入る第3セクター鉄道も同様で、そもそも国鉄の赤字路線を引き継いでいる分、過疎化やモータリゼーションの 影響は大きいと言えます。智頭急行や甘木鉄道など一部の例外はありますが、その多くは赤字続きというのが実情であり、昨年の 北海道ちほく鉄道や神岡鉄道のことも記憶に新しいのですが、第3セクター路線の完全廃止も続々と出でくることになるでしょう。 事実、三木鉄道は利用上も政治的にも廃止がほぼ決定しており、基金を使い切った第3セクター線も続々と出ています。ちょうど 発足から20年以上という会社も多くなり、車輌の更新という資金上深刻な問題もおきています。第3セクター鉄道の多くがバブル期に 誕生したということも需要予測を下回る要因となった遠因ともいえるでしょう。第3セクター化によって地域住民に「マイレール」 という意識をつけることにはある程度成功しましたが、それ以上に過疎化やモータリゼーションは激しく鉄道客を減少させてゆき ました。頼みの綱でもある高校生などの通学輸送も、少子化により先細りの一方となっています。
 それではローカル鉄道に将来はないのでしょうか。残念ながら現在の状況では純然たる私鉄として存続してゆくのはかなリ 難しいと言わざるを得ません。第3セクター線についても公費注入によりある程度は存続させることができますが、それも時間の 問題と言えるでしょう。そこで近年注目されているのは「第4セクター方式」とよるものです。これは第3セクターに地域住民を 加えたもので、地域住民も出資することでより強いマイレール意識を持たせようというもので、京福電鉄のあとを引き継いだ えちぜん鉄道で行われています。出資者に加わることで鉄道に対する要望などもくみ上げられることも期待できます。いずれに せよ、乗客を確保し続ける工夫をしなければどのような仕組みでもやがてうまくいかなくなり、廃線という憂き目となるのは 必至といえるのではないでしょうか。副業で乗り切る方法もありますが、それぞれの鉄道の魅力をうまく引き出して地域住民 のみならず、鉄道好きではない観光客を呼び寄せることができれば生き残ることができるでしょう。かなり難しい課題ですが...。


きはゆに室長