スタフとスタフ

 大阪で開催された鉄道フリーマーケットでのひとこま。
客 「この運転時刻表のこと”スタフ”って言うけど、”スタッフ”と 何か関係あんのかな?」
出店者 「さぁ...みなさんこれのことを”スタフ”って呼んでますけどねぇ...」
客 「(鉄道会社の)研修でこれのことを”スタフ”って呼んだら、『スタフとは閉塞方法のひとつでこれは そのようには呼ばない』って言われた。」  (後略)

 鉄道会社に勤務していると思われるこの人物の話を聞いていて、確かにそうだと思いました。鉄道部品を集めている 方であればご存知だと思いますが、運転手が持っている運転時刻表は「スタフ」と呼ばれています。しかしその一方、 鉄道の非自動閉塞方式の一つに「スタフ閉塞式」というものがあります。もしこの両方が正式名称だとすれば、スタフ閉塞式 区間ではスタフ (時刻表) を持った運転手がスタフ (閉塞の通行手形みたいなもの) の到着を待つ...などというややっこしい 話もまかり通ることになります。情報の混乱を避けるため回りくどい言い方をすることも多い鉄道業界の中で、このようなことが 果たしてありうるのでしょうか??

 まずわかっていることから検証してゆきます。「スタフ閉塞式」とは、国鉄時代では「通票式」と呼ばれていた閉塞方式で、 ある閉塞区間に対して1つの列車しか走らせない方式で、通票 (たいていはタブレット) を持つことで列車はその区間を 走ることが許される方式です、岩泉線などで現在も使用されている方式です。「通票式」がなぜ「スタフ閉塞式」となった理由は 定かではありませんが、「通票閉塞式」、いわゆる「タブレット閉塞式」との混同を避けるためではないかも思われます。
 話を「スタフ」に戻します。それではどこから「スタフ」という名前が来たのかと言うと、もともとこの「通票式」の区間では 現在のようにタブレット (あの円盤に各種の穴が開いたもの) を使用しておらず、棒の先にタブレットの穴の形に相当する板が ついたものを使用していました。そしてこの棒のことをスタフ”staff”と呼んでいたのです。つまり、こちらの「スタフ」 は一般的に言う「スタッフ」と同じであったのです。そもそもこの”staff”には、職員・部員・幹部・参謀という意味の ほかに、「つえ・棒」といった意味もあり、ここから命名されたのです。この棒状の「スタフ」は現在ほとんど姿を消してしまい ましたが、津軽鉄道や名鉄臨港線でかろうじて残っているようです。

 次に、運転時刻表の「スタフ」について。こちらに関してはほとんど確たる証拠がないため単なる俗称というのが結論かも しれませんが、阪急では時刻表挿しのところに「スタフ確認」などと書いていることから、非自動閉塞を使用していない鉄道会社 では立派な名称となっているのかもしれません。語源についても推測の域を出ないのですが、”stuff”という単語が あります。その意味は@材料・原料・素材 A(人の)素質 B食べ物・飲み物 C[口語的]物・物体 と並ぶなかでD[口語的] 持ち物・手回り品という意味がありました。すなわち、運転手の「持ち物」ということで「スタフ」と呼ばれるようになった ものと思われます。

 この2つの「スタフ」について正解、または正しい語源などをご存知の方がいらっしゃったらご連絡お願いいたします。 とりあえず、JR内では「スタフ」とは閉塞方式をさすことだけは事実のようであり、棒状の通票を「スタフ」と呼ぶことも 事実のようです。問題は運転時刻表のことをいつ、だれが (どこの会社が) 「スタフ」と呼ぶようになったのか、はたまた、 単なる俗称に過ぎないのか。2つの「スタフ」のギモン、結構奥が深いかもしれません。


きはゆに室長