国鉄型車輌の行方

   今回は毎年おなじみとなった(?)、年度ごとの車輌の転廃などを更新しました。今年の大きな特徴は103系、113系といった巨大グループの大幅な減少と言えるでしょう。気動車においてはキハ58系が消滅への階段を進める一方、キハ40系の廃車もじわじわと進んでいます。考えてみれば国鉄からJRになってから19年。国鉄型車輌が消えてゆくのも当然のことであり、「まだ残っている」と考えるのが妥当なのかもしれません。今回はやがて消えゆく国鉄型車輌について考えていきたいと思います。

 「国鉄型車輌」の代表的な形式といえば、電車なら103系、113系、115系、165系、485系。気動車ならキハ58系、キハ40系、キハ20系、キハ80系。機関車ならEF65、EF81、DD51、DE10、DD13...と、各人により微妙に異なる場合はありますが、およそこのようなラインナップとなるでしょう。この中にはすでにJR線上から姿を消した形式もある一方、まだ多くが残っている形式もあります。
 この2005年度ではJR東日本から103系が事実上消滅し、廃車が次の世代 (201系) へと移行することになりました。103系最後の砦となったJR西日本でも京阪神の緩行線に321系が投入され、突き出しで201系が大阪環状線に入り、老朽車 (特に分散冷房の車輌) の廃車が再び始まりました。2004年度ではJR西日本で113系が大量廃車となりましたが、今年度の東日本の規模はこれよりも大きく、113系全廃がいよいよ現実的であることを感じさせられました。ある意味、特殊用途車とも言える415系など交直流車はその特殊性と新車投入費用の点から比較的車齢が高い車輌が残っていましたが、仙台地区や鹿児島地区など直流機器を必要としない地域はもちろん、常磐線上野口発着の415系ですら、近年新車の投入が積極的に行われその数を徐々に減らしてきています。交直流車の特性をフルに発揮しているのは北陸本線の車輌ぐらいですが、こちらも直流区間が敦賀まで伸びることで変化が発生する可能性が高く、北陸新幹線が完成した際には極めて大きな変化が発生する (交直流特急車をローカル転用した上で3セク化する など) と考えられ、「特殊だから安泰」とはいえない状況になってきています。
 気動車のほうは、JR東日本が早くにキハ58系などを置き換えたこともあり、電車ほどの急激な減少とはなっていません。しかし山陰の近代化によってカウントダウンが始まったキハ58系の消滅は一歩、また一歩と進んできています。しかもそれまでキハ58系にとっては亡命先 (?) であった四国で置換えのために新車が導入されることとなり、もはや原形を保ったキハ58系に乗車することはかなり難しいこととなりそうです。多く残る鹿児島と盛岡についても、保留車を抱えていることや新車導入により発生する転配という状況がある以上、一気に消滅する可能性はあります。キハ40系についてはJR東日本で徐々に進められている一方、今年度ではJR北海道で廃車が発生しました。この車輌は映画「鉄道員」(ぽっぽや)で使用された車輌で、そのような特殊事情という理由もあるかもしれませんが、今後廃車が続く可能性もあります。これ以外の各社については各種の改造や延命を受けているためしばらくは安泰かと思われますが、キハ58系が消滅すればすぐにキハ40系の廃車が進められることでしょう。
 機関車と客車については最も深刻です。客車は久大本線と筑豊本線の客車列車が消滅し、快速「海峡」が廃止され特急に統一されて普通客車列車が消滅したにとどまらず、相次ぐブルートレインの廃止によって寝台客車ですらどんどん数を減らしています。波動用となった車輌もあまり使われなくなったことで老朽化が進み、そのまま廃車、または廃車前提の保留車とされることが多くなっています。客車列車の減少は旅客会社が機関車を保有する意味を薄れされ、機関車の廃車へとつながっています。一方、貨物のほうは近年の鉄道貨物への回帰のおかげで廃車のペースは収まりつつありますが、こちらは幹線系を中心に新型機関車が導入され、今後の輸送量の変化によっては国鉄型の電気機関車の廃車が再び始まることも考えられます。また、ディーゼル機関車については北海道にDF200が導入されている以外に大きな変化は見られなかったのですが、この数年の間にDD51の機関換装が行われたり、貨物駅の改良や移転による入換不要が進んだりして若干の変化が出てきました。また、入換・支線区用のDE10についても後継車輌の開発が進んでおり、国鉄型機関車の淘汰が一気に進む可能性があります。

 形あるものはやがて消えてゆくのが自然の摂理であり、それが経済活動をしている企業体であれば当然であるといえるでしょう。鉄道車輌の寿命はだいたい30年と言われ、40年も使えば「老朽車」という扱いになります (それでは鹿島のキハ600型はどうなる?!)。国鉄消滅から来年で20年。「国鉄型」の代表形式の車輌の車齢は次々とこの「寿命」に近づき、超えてゆきます。あと2・3年もすればこれらの代表的な形式のほとんどが消滅しているかもしれません。けれど「国鉄」が製作した車輌は最低あと10年は残ることでしょう。ただ、それが211系や205系、キハ31、キハ32、キハ54といった「国鉄型」とはすぐに言いにくい車輌であるのが悩みのタネなのですが...。

きはゆに室長