気になる新車配備

   鉄道雑誌を購入されたり、ネット上で鉄道に関するニュースを頻繁にチェックされたりする方であれば、今年度に導入される新形気動車についてはご存知のことでしょう。JR東日本のキハE200とキハE130、JR四国の1500系です。キハE200はキヤE991を量産化したハイブリッド気動車で小海線に、キハE130は従来どおりのエンジン駆動ながら、701系電車シリーズのような標準車体の3扉車、そして四国の1500系は1000系の発展型とでも言うべき車輌で、燃費の向上・バリアフリー化を備えた3扉クロスシート車となっています。 この3形式の登場によって現在の車輌、特に国鉄型車輌の今後について考えてみたいと思います。

 まず四国の1500系に関しては、その目的がキハ65を含めたキハ58系の淘汰であるため、四国からキハ58系が消える日も近いことは想像するに難しくありません。厳密に言えば、1500系が投入されるのは徳島 (高徳・牟岐・徳島の3線で使用) で投入により吐き出された1000系が高知・松山に配置されることで置換えが行われる手はずとなっています。したがって現在キハ58系が使用されている線区に1500系が入ることはなく、従来からある1000系が増備されるという形になります (松山は1000系初配置ですが) 。なお、徳島に残留する残りの1000系については1500系併結可能改造を受け1200系となる一方、キハ40系については1500系配置の影響は受けずにそのまま残る見込みです。
 今年度の新車3形式のうち、JR東日本の2形式については車輌概要と導入路線が発表されただけで、今後の車輌配置については不明な点が多くなっています (私の情報収集不足かもしれませんが) 。キハE200が投入される小海線もキハE130が投入される水郡線も現在使用されている車輌はキハ110系で、これらを廃車にするとは、いくらJR東日本でも到底考えられません。となればこれらの車輌をどこかに移し、古い車輌を廃車にすることが容易に考えられます。

 まずはこの2線に配置されている車輌の数を整理しておきます。小海線にはキハ110が18輌、キハ111と112が3輌ずつ、水郡線にはキハ110が17輌、キハ111+112が12輌ずつとなっており、合計ではキハ110が35輌、キハ111+112が15輌×2となり、総計で75輌もの量となります。もちろんこの数は全てを置き換えることを前提にしており、居残り組がある場合は当然のことながら吐き出される車輌数は少なくなります。もちろん1年という短期間で75輌も新型の気動車を増備して全車を置き換えることも、あまり現実的ではないような気がします (でも東日本ならやりかねないような気も...) 。ともあれ、一応ここでは全車が置き換えられた場合を想定して考えていきたいと思います。まっさきに考えられるのは盛岡や新津に残るキハ58系とキハ52の置換えです。新潟のキハ58系以外は全て非冷房車であるうえ、キハ58は車体更新を受けていない車輌が多く、キハ52はそもそも製造年が一段古いという点が挙げられます。これらの車輌数はキハ58系が21輌 (うち盛岡は18輌で訓練車と「kenji」を除く) でキハ52が24輌 (盛岡は17輌) の総計42輌。数の上では全てをキハ110系にすることは可能です。ここで問題となるのはキハ58系が残っていた経緯です。盛岡に非冷房で老朽化したキハ58・キハ52が残っていたのは、使用される花輪線・山田線・岩泉線が急勾配線であったためで、これは同じく新津のキハ58・キハ52が使用されていた米坂線も同様でした。急勾配線であれば強力エンジンを持つキハ110系は適任のような気はしますが、1エンジンのため空転時が問題となります。空転とは勾配途中で車輪が何らかの原因でスリップし、前進できなくなることで、特に1エンジンの気動車の場合は動車輪が1つしかなく、国鉄時代はこの空転防止も兼ねて勾配路線に2エンジン車を導入して来た経緯がありました。ところでキハ110系という車輌は、1エンジン車ではあるのですが、動車輪はシャフトがつながる側の台車全てが動く2軸駆動となっています。2エンジンが2軸駆動で克服できるのかという疑問はあり、先ごろ大糸線でキハ52を置き換えようとキハ120を試運転したところ、空転が多発し白紙に戻ったという経緯があります。しかしながら小海線は33‰とという急勾配路線。国鉄時代にはヤスデの大発生による空転事故も発生したといういわくつきで、キハ52やキハ58が投入されている路線でした。その小海線で活躍していたキハ110系。空転対策については問題ないというのがJR東日本の結論なのでしょうか。
 キハ58系置換えのほかに考えられるのが八戸のキハ40系の置換えです。八戸のキハ40系は寒冷地という理由で冷房化もされておらず、デッキも残っています。キハ58系の置換えが不可能な場合はこのパターンが考えられます。八戸の配置数はキハ40が28輌、キハ48が12輌 (きらきらみちのくなどを除く) で計40輌。管轄の八戸線や大湊線、津軽線はいずれも平坦線で置換えに問題はありません。八戸のキハ40系のエンジンが原型のままという車輌が多いことも注目すべき点です。一方、キハ110系でも気になる点はあります。小海・水郡の両線に配置されているキハ110系はいずれもプラグドアの100番台です。現在八戸には大湊線快速用にキハ100が配置されていますが、こちらは一般的な引き戸になった200番台で、寒冷地でのプラグドア使用ができるのかが唯一の問題といえるでしょう。
 もう一つ考えられるのは久留里線のキハ30・37・38の置換えです。配置数自体は合計で13輌と少ないのですが、キハ30は老朽化、キハ37・38少数生産といった不安理由があり、3扉車と2扉車が混在しておりワンマン化もされていないという特徴もあります。久留里線だけの置換えということはないのでしょうけれど、他の路線と一緒に置き換えられるということはやや現実味を帯びているように思えます。

 いずれも単なる憶測にしか過ぎませんが、数年のうちにはキハ110系75輌全てが各地へ移り、ほぼ同じ数の廃車が発生することは間違いはないでしょう。上記のような単純な配置転換はおそらくないものと思いますが、たとえば高崎の200番台を100番台に置き換えて、これを八戸を持ってゆく。残りは久留里線や2輌運転が基本となっている花輪線や米坂線へ持っていく。単行が原則の岩泉線とこれに接続する山田線では車輌運用上の都合でキハ52が残る...。いずれはこのようになるのでしょうか...?。そもそも岩泉線が消されてしまえば山田線もキハ110系化されてしまう危険性が! いずれも撮影はお早めに。

きはゆに室長