キハ55系

   前回(3月1日)の更新内容と今回の更新内容をご覧になって、ワタクシの考えていることを見抜いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。前回はキハ55系の全面的更新。そして今回も55系を多く含む更新となっています。そう、TOMIX(以下T社)からキハ55系が発売されるのに合わせたのです。
 まぁ考えることが単純と申しますか、安直な思考回路とでも申しますか、前回のキハ17系(ちょうど1年前)と同様に模型の発売にあわせた更新内容となっておりまして、鉄道模型に全く興味のない方々には大変申しわけなく思います。けれどキハ55系が模型化された(しかも大手による大量販売)ということは、キハ55系に関する情報が必要となることも意味します。もちろん実際に乗ったことがある方や見たことがある方にとっては「何を大騒ぎしているのか」と思われるかもしれませんが、実はキハ55系をよく知らない方は結構いらっしゃるように思います。
 そもそもキハ55系は1956年に登場し、キハ58系が登場する1961年まで製造された車輌ですが、総数は486輌とキハ58系はもちろん、キハ17系やキハ20系よりも少なく、さらに準急用として作られたキハ55系に対し急行用として登場したキハ58系の存在はキハ55系にとってありがたくないものでした。さらに追い討ちをかけたのが準急の廃止と1等車のグリーン車化でした。準急用のキハ55の客室設備はクロスシートでデッキつき、トイレもデッキの外にあるのものの洗面所はキロとキロハしかなく(簡単な手洗い場はある)、長距離の移動にも利用できるが安い分だけ少し物足りない、まさに「準急用」というものでした。キロとキロハに関しては座席がリクライニングシートではないという理由から、等級制の廃止の際にグリーン車となれず普通車へ格下げ(300番台・400番台)になる不運さでした。このようなことがあってからもキハ55系は急行に組み込まれたり、300・400番台は指定席に割り当てられるなどされましたが、結局中途半端さが目立つだけとなって荷物車への格下げや通勤型ロングシート改造まで受けるようになります。ここまではまだ他の車輌でもありがちなことなのですが、最後に決定的となったのが全ての車輌が姿を消してしまったことなのです。キハ55系の廃車はキハ17系の廃車が終わりに近づいた1980年ごろから本格的になり、国鉄が幕を閉じる一歩先の1987年2月に全てのキハ55系が廃車されました。全て廃車されたのはキハ17系などでも同じなのですが、キハ55系は全て片運転台の車輌であったことが悲運の原因でした。キハ17系ではキハ10や11など両運転台の形式があり、ローカル私鉄に譲渡されて生き残る(南部縦貫や茨城交通など)ことがありましたが、片運転台の車輌は説明するまでもなく最低の運転単位は2輌からとなり、ローカル私鉄にとっては扱いにくい車輌でしかなかったのです。したがってどこかの私鉄に残っていたわけでもなく、ましてや保存されることもなかったため、キハ55系の歴史は1987年2月で完全に終わってしまったのでした。これは単に姿を消しただけでなく、後世にキハ55系がどのような車輌であったかということを伝えられなくなったことを意味します。事実、私も鉄道ピクトリアル2003年3月号の特集でキハ55系が取り上げられるまで、キハ55系の詳しいところ(特に客室内)は全くわからない状態でした。気動車には様々な形式がありますが、量産された系列で全ての車輌が消滅したのはこのキハ55系だけなのです。
 さらにキハ55系の存在は模型においてはさらに低く、気動車自体が少数派である鉄道模型(Nゲージに限るかもしれませんが)の世界において見向きもされなかったのです。数年前にウインという会社がキハ55・キハ26(ともにバス窓を含む)・キロ25(キハ26-400番台として)を発売しましたが、下回りはキハ58を流用したもので若干消化不良気味のものでした。しかもすべての模型店で入手できるものではなく、ある程度大きな規模のところでしか手に入れることができないうえに販売単位も大きいものが大半でやがて店頭から姿を消し、二度とその姿を見ることはないかと思われました。そこに飛び込んだのがT社のキハ55系発売のニュースです。昨年のキハ17系の売れ行きがよっぽどよかったためなのかはわかりませんが、国鉄の消滅形式気動車シリーズ(?)第2弾として発売されることになったのです。しかも今回はキロハ25やキユニ26もあるということ。値段が高めなのはイタイのですが、床下機器などもじっくりと作り込まれており、納得できる内容といえるでしょう。これに刺激されてKATOのキハ20系もそれそれ新金型で作り直してくれないか、と思うのは私だけでしょうか。
 余談として、T社では夏ごろにまた気動車の廃形式の車輌を発売するようです。当資料室でも三たび便乗しようと考えております。その形式は..........。勘のいい方ならおわかりでしょう。

きはゆに室長