石炭資料館 

 先日筑豊の石炭関連の資料館を2ヶ所訪れました。ひとつは鞍手町の鞍手町石炭資料展示場、もうひとつは田川市石炭資料館です。
 鞍手町の石炭資料展示場は総合体育施設・民俗博物館に併設する形で設置されています。民俗博物館の付属というような存在のため規模は小さいのですが、展示場は坑道のようになっており坑道内にいるような感じになります。展示は当地で産出された石炭や使用されていた機械類、坑内での作業を再現した人形などがあります。歴史などの文章パネルも充実しており、音声での案内もあります。坑内の雰囲気を再現するためか、展示室が暗めになっているため文章や展示物をじっくりと見るのにやや難儀します。この展示場のあるところに坑道があったようではないのですが、少し離れたところに坑道があり、筑豊本線に通じていました。一連の施設の前を通る道路がその線路の跡で、現在の鞍手駅が本線と分岐する信号所でした。「現在の」というのは、もともと「鞍手駅」というのは室木線の駅にあったのですが、室木線の廃止によって一度消滅し、JR九州初めての開業駅として昭和62年7月1日に「現」鞍手駅が誕生したためです。
 田川市の石炭資料館は三井田川炭鉱の跡に作られた資料館で、一体が公園に整備されている関係でその規模も大きいです。展示内容は鞍手町と同様に産出の石炭、使用機器、坑内労働の再現、文章パネルとあるほか、炭鉱住宅が再現され、炭鉱内の映像や炭鉱労働や炭鉱労働者の生活を描いた絵なども展示されています。また、当地一帯で出土された考古学資料も展示されています。機械類の展示は鞍手町と比べるとかなり多く、地下から炭車を引き上げる巻き上げ機や機械類の動力を作り出したボイラー(?)の煙突など、「いかにも炭鉱」というような物をはじめ、様々な種類のトロッコ、炭車、人車、機関車、機械類が屋外に展示されています。もちろん炭鉱内での掘削作業に使用する道具類も館内に多くが展示されています。ただ、多い展示物に対し説明板が少なかったり、見づらかったりするところが難点と感じました。けれど石炭自体の説明から始まり、現物展示や映像による炭鉱労働の様子、全国の炭鉱の分布と各炭鉱の性質、炭鉱での風俗と、あまり炭鉱について知らなくてもそれなりに知識を付けることができる内容となっています。もちろん興味がある方であれば満腹感を味わえるものだと思います。あと、炭鉱住宅の展示は珍しく、しかも明治期、大正期、昭和期と各時代の炭鉱住宅が再現されており、昭和期の炭住には住人も居ます(動きませんが)。また、この炭住の一角はイベント用になっており、何らかのイベントが開催されているようです(このときは給食と地域の産業展でした)。
 炭鉱関連の展示施設は他にもたくさんあり、筑豊でも私の知る限り直方市と宮田町にあります。今回はこの2ヶ所を回りましたが、2ヶ所を回ったことは結果的によかったと思いました。それぞれに不足する部分をそれぞれが補ったからです。滞在時間は鞍手町が1時間弱、田川市が1時間半ぐらいでしたが、もう少しじっくり見てもよかったかなと思います。なお、入場料は鞍手町は無料、田川市は210円です。展示内容からすればかなり安いはずですので、足を運ぶ価値はあると思います。鉄道が好きな方、特に蒸気機関車が好きな方であれば、その動力源となった石炭がどのようなものでどのように産出したかを知るのも趣味の幅を広げることになると思います。日本の工業の発達に大きく貢献し、その一方で多くの犠牲を出した炭鉱の栄枯盛衰の歴史を学ぶことに価値はないとは言えないでしょう。なお、鞍手町石炭展示場はJR筑豊本線・鞍手駅から徒歩15分(バスも毎時1本程度あり)、田川市石炭資料館は日田彦山線・平成筑豊鉄道・田川伊田駅から徒歩10分のところにあります。鞍手町、田川市ともに月曜日と第3日曜日、年末年始が休館日となっており、ほかにも休館日が設定されています。詳しい開館時間や休館日、各資料館の連絡先、駅からのルートなどはネットで検索していただくか、室長にメールをしていただければお教えいたします。
 ちなみに、この2ヶ所を選んだのは保存車輌があるという理由もあったのですが、残念ながら鞍手町のほうは気動車は解体され、石炭車が九州鉄道記念館に行き、ほかは直方の汽車倶楽部へ移ったというお話でした。数少ないキハ28の保存(しかも非冷房車)であったため大変残念だったのですが、同じく展示されていたDE10の状態を見ればやむをえないのかもしれません(DE10の状態は鉄道ピクトリアル2000年12月号のDE10特集に掲載されています)。倉庫代用のワム3輌は残っていましたが...。


きはゆに資料室長