夜行列車の将来

   この10月のダイヤ改正により夜行急行「だいせん」が廃止となりました。急行列車の廃止と同時に夜行列車の廃止であり、鉄道旅をする方にとっては大きな痛手であろうと思います。最近サンライズシリーズやカシオペアといった新しいタイプの夜行寝台列車が登場していますが、その一方で昔ながらの「夜汽車」的な列車は減少の一途となっています。特に165系電車や12系客車といったボックスシートの列車がなくなり、わずかに583系を使った「きたぐに」と臨時の「ムーンライト東京」の自由席で味わう程度となってしまいました。その一方で余剰となった特急型車輌を回すケースが多くなり、「寝方」もいままでの様にいかなくなってきました。それまでの夜行列車の寝方には次のような分類ができると思います。ちなみに、ここで言う「夜行列車」とは座席車を指し、いわゆるブルートレインなどの「寝台車」を指しているのではありません。「寝台列車」の将来も不安ですが...。
  1-ボックスシートできっちりとすわり窓や肘掛にもたれて寝る(中には何も使わない方も...)「マナー遵守型」
  2-ボックスシートの向かい側に足を投げ出し、場合によっては足を投げ出したままシートに横になる「ボックス独占型」
  3-ボックスシートを細工し簡易寝台を作成する「裏ワザ型」
  4-リクライニングシートをフル活用し、ほぼ横になって寝る「ゴージャス型」
 1〜3は165系などの場合で4は夜行用に改造された車輌(かつてのムーンライトえちごやミッドナイトなど専用車輌)の場合ですが、特急用車輌となると1か4の変形を使わざるをえず、2や3は使うことができません。特急用車輌の夜行使用の大きな欠点は座席です。特急用のリクライニングシートは睡眠には角度が少なく、シートピッチも狭いため中途半端な状態となります。個人的な見解ですが、デラックス化した新しいタイプの座席も頭の部分がやや前傾姿勢となり、首が曲がった状態となって寝心地はよくありません。だいせんの場合も特急型リクライニングシートで、寝心地はあまりいいとは言えないものでした。新型リクライニングも困難ですが、簡易リクライニングもさらに困難です。「ムーンライト高知・松山」に使用される14系客車に使用されているこのシートはリクライニングが固定されず、「座布団」の部分を前に引き出し続けて背ずりの傾きを維持しなければなりません。ずっと座っている状態であればある程度問題はないのですが、少しでも腰を浮かせるとリクライニングは解消され、キシミ音とともに直立してしまいます。夜間にこの音をたてないよう気をつかう心理的につらいシートです(人の迷惑をかえりみないのであれば大した問題ではないかもしれませんが)。
 夜行列車という時間の有効活用ができる列車がなくなることはいろいろな面で残念です。大衆的な夜行列車がなくなる一方で高級寝台列車は誕生しています。夜行バスが人気を呼んでいるという現実もあります。夜間移動する人口が減っているわけではないはずなのです。結局のところ、夜行列車への各鉄道会社の考え方が客のニーズに沿っていないのだと思います。夜行列車から自由席がなくなった(きたぐにを除く)のもホーム上の行列解消や指定料金で少しでも損を取り戻そうとする意図を感じざるをえませんし、夜行専用改造を施さないのも定員減と専用列車化を避け、余計なコストを出さないためであると考えられます。多客期の夜行における自由席の混雑さは大変なもので、せめてその時期だけでも自由席は設けるべきであると思います。指定料金が取れなくても、通路にまで人があふれる分、運賃収入が増えるはずなのですから(青春18でも)。積み残しや飛び込み乗車といった問題も解消されないと思います。コスト面やバスとも競争など、鉄道会社の言い分もわからないわけではないのですが、何とか夜行列車の火を消さないように願います。夜行列車 ―夜汽車― には独特の雰囲気があるのですから。


きはゆに室長