新幹線開業の光と影

 九州新幹線が3月13日に開業しました。一方で鹿児島本線八代〜川内は肥薩おれんじ鉄道に移管され、JRから分離されました。長野新幹線開業以来併行在来線が切り捨てられるこのが当たり前のようになり、今回もお決まりのパターンという感じとなりました。
 室長も転換前に、電車であるうちに乗っておこう (できればクハ455-600に) と思い、出張(?)してまいりました。いざ乗車してみると「曲線が多い」というのが第一印象でした。曲線に差し掛かると速度を落とし再び加速する、ということがたびたびありました。たしかにこれではいかに車輌を工夫してもスピードアップには限界があり、一部以外単線というのも含めて新幹線が望まれるのも納得できます。しかし在来線をそのまま切り捨てるのはいかがでしょうか。料金は八代からとなりの肥後高田まで200円が230円に、八代〜水俣が910円から1220円に、八代〜川内が2070円から2550円にもなります。これが定期となればさらに大きな値上がりとなります。この肥薩おれんじ鉄道は県をまたいでいますが会社は分断されず、旧東北本線のような県境をはさむ二重取りは行われなかったのが少しもの救いなのですが、値上げはもちろん、八代や川内から先のJR線まで乗車される方にはさらに負担増となります。むろん費用の面だけでなく、乗り継ぎの問題や列車本数の問題もあります。
 本日の新聞の投書欄にこの件に関する投書がありました。地元に何の連絡もないまま駅が無人化され、このままでは地域の格差を生むだけだという内容です。これは鉄道事業法が改正され、地元自治体との交渉なしに廃止等ができるようになったためで、利用者ばかりでなく自治体の負担も増えてゆきます。国鉄時代からのものを含め、第三セクター線で黒字経営をできている会社は極めて少なく、このおれんじ鉄道についても気動車化に見られるように厳しい経営が予想されます。地方自治体は地元のことはよく知ってはいますが、鉄道経営のことに関しては素人です。JR九州の離職者を採用したりしているのでしょうが、他の第三セクター線のように体質改善がなされないまま赤字だけが膨らむということがないよう祈るだけです。せっかく地元に管理が委ねられたのですから、自分たちが必要としている場所に駅を作り、必要とする時間帯に列車を走らせ、妥当な料金体系を設定してゆかなければもったいないだけです。行政はもちろん、地域住民のみなさんもしっかりと考えて連携してゆかなければ、廃線や負担増などさらにつらいことになってゆきます。
 新幹線開業の裏では地域社会の厳しい現実があります。新幹線はより早く、より多くの人を運ぶことができますが、その分地域とのかかわりはうすくなり本来の「鉄道」としての輸送が果たせなくなる面があります。現在九州新幹線も博多と八代が着工しているほか、北陸でも新幹線の建設が進んでいます。単に新しいものが開業したから古いものは切り捨て、という考えには疑問を感じざるをえません。  

きはゆに室長